琴詩書画巣   古琴音楽   中国絵画   詩・書   中国文人の世界   北京信息   パリ信息   リンク  
   中国絵画News | 中国絵画の流れ | 日本美術史ノート | 中国絵画ことのは   胸中の丘壑  荊浩筆法記
  林泉高致   課徒画稿
  雨窓漫筆   畫語録


 中国絵画史ノート 元時代 元末四大家 文人画の成立

元代文人画の革新
 元代前半の趙孟頫らの復古主義の展開 →絵画の変、趙子昂と復古主義参照
1.技法:紙に(タッチ,筆致,筆触 墨に対する線)
   渇筆 個性的なタッチによる統一
2.形態、空間の線による抽象化
3.平淡(安定した水平線、垂直線)な江南の自然 董源、巨然の山水
   “画中の自然”(宋“胸中の山水”)

黄公望 1269‐1354
[生涯]
常熟(江蘇省)人 本姓は陸、黄氏の養子となり改姓 名公望、字子久
1292年至元二九年頃杭州で胥吏(下級官吏)
1300年大徳四年頃 趙孟頫に画を師事
1315年延祐二年北京で監察御史院長官の張閭の租税不正事件に連座し入獄
帰郷後江南各地に遊び、道士金蓬頭につき新道教の全真教に入る
 杭州赤山筲箕泉、富春山に隠棲 号一峯、大癡
50歳頃 作画を開始 
60歳頃 蘇州天徳橋に三教堂を開き布教にあたる
[作品]
山水画:董源、巨然、趙孟頫に学ぶ “呉興室中の大弟子”
1341年至正元年《天池石壁図》 絹墨淡 139.4×57.3cm 北京故宮博物院
 コピー その他のコピーに台北故宮本、フリア本、藤田美術館本などがある
 浅絳山水 建築のような構築性 
1344年至正四年《溪山雨意図巻》 紙墨 中国国家博物館
 趙孟頫水村図巻を継承 黄公望自跋 富春山居図巻に次ぐ代表作
 文彭引首、王国器(趙孟頫の娘婿、王蒙の父)菩薩蠻詞、倪瓒跋
参考:《丹崖玉樹図》 紙墨淡 101.3×43.8cm 北京故宮博物院
 張翥、陸行直、王国器、徐霖、無名氏など元人五題、明董其昌題など
1346-8年頃?《九珠峰翠図》 絹墨淡 79.6×58.5cm 台北故宮博物院
 楊維1296-1370のために描く 楊維驕A王逢1319-1388題
 浅絳山水 早期のコピー?
1349年至正九年《九峰雪霽図》 紙墨 北京故宮博物院 コピー
1350年至正十年《富春山居図巻》 紙墨 33.0×636.9cm 台北故宮博物院
 3年をかけ完成 文人画の古典
(《剰山図》31.8×51.4cm 浙江省博物館 明末所蔵者呉洪裕副葬時の断片
  →参考:火傷以前1487年沈周《仿黄公望富春山居図卷》北京故宮博物院
      冒頭オリジナル復元→富春山居図+剰山図
 1.変幻自在で多様(潤-渇筆、淡-濃墨)なタッチ 披麻皴
   制作過程そのもの
 2.量隗を単位にした力学的な画面の構築
 3.平淡 中性的な感情 “無愛無憎”(倪瓚評)
画論:『写山水訣』 董源、巨然の様式 造形、技法について →原文参照

呉鎮 1280‐1354
[生涯]
嘉興(浙江省)人 字は仲圭、号は梅花道人、梅沙弥など
在野で売卜、売画 生涯貧困 隠逸の志
晩年は禅宗に帰依
[作品]
山水画:董源、巨然に学ぶ 円筆(中淡墨)+広い墨の面 明暗と滋潤な効果
1328年奉定五年《双松図》 紙墨 台北故宮博物院 紀年作中最早の一
1341年至正元年《洞庭漁隠図》 紙墨 台北故宮博物院 巻き込む披麻皴
 題:洞庭湖上晩風生,風攬湖心一葉横。欄棹穏,草花新,只釣鱸魚不釣名。
1342年至正二年《漁父図》 絹本墨画 台北故宮博物院 秋の月夜の湖
墨竹画:北宋風の墨竹で一家 
1350年至正十年《風竹図》 紙墨 109.0×32.6cm フリア美術館
1350年至正十年《墨竹冊》 紙墨 台北故宮博物院 子の仏奴への日記
:草書 [恐言]光に師事 《般若心経》 遼寧省博物館
文:『梅花道人遺墨』 明末の編集、伝説が混じる 『梅花庵稿』

倪瓚 1301‐74
元張雨題倪?像 [生涯]
無錫 (むしやく 江蘇省) 人 初名鹿、後守と改名 字元鎮、号雲林、幻霞生など
梅里祗陀村の代々の富豪 幼時に父を失う
異母長兄の倪昭奎(新道教全真教の指導者、元朝より真人号を特賜)に養育される
邸内に清閟閣を築き書籍、古書画器物を秘玩し隠逸生活 琴詩書画をよくする
1328年泰定五年28歳 家産を相続
 非常に個性が強く奇行癖、極度の潔癖家 全真教に帰依
1353年至正十三年53歳ころ 家財を整理し近親者に分け出郷
以後20余年流寓生活の末に帰郷 晩年は禅に傾倒
1363年至正二三年妻蒋氏病死
1374年明・洪武七年貧困のうちに病没
[作品]
:道教修養の琴 「一聲冰玉落空林…冷然真足洗予心」二十八日又一首
 1352年東海雲林生監造琴《月明滄海琴》 上海博物館 「純陽子」亜字形印
文:『倪雲林先生詩集』六巻、附録一巻 明1460年天順四年蹇曦刻本
 『清閟閣全集』 清康煕五十二年曹培廉校本
:(画期3区分は楚黙による)
(1)早年(芸道修養)1342〜53年頃:猶勁、精美 王献之書風に隷味
1342年至正二年《題陸継善模禊帖冊》 台北故宮博物院 褚遂良風
1347年至正七年《題銭選牡丹図》
(2)中期(漂泊生活):清勁、蕭疏
中年書風転折期1353〜63年:簡淡、隷味は小、鋭角、横長に
1362年至正二二年《贈袁寓齋書画巻》 29×60 崑崙堂
1362年頃《致慎獨有道詩札》 30×45 台北故宮博物院
1362年頃《呈履道先生詩札》 香港中文大学
1363年至正二三年《呈張徳機詩帖》 吉林省博物院
中年書風形成期1363〜69年:リズム感、行書の筆意
1364年至正二四年《跋唐人臨右軍冊》 31.8×20.5 台北故宮博物院
1365年至正二五年《題陳惟允孟郊詩意図》 ぎこちなさ
1366年末頃《致葉城諸詩札》 香港中文大学
(3)晩期(逸筆草草)1369〜74年:率意、簡逸
1372年明・洪武五年《跋周文英詩志伝》 遼寧省博物館
1372年明・洪武五年《呈寓齋詩帖》 香港中文大学
1372年頃《呈久成札》 香港中文大学
1373年明・洪武六年《次韻耕隱漁者詩札》 香港中文大学
《小楷江南春三首》 上海博物館
《呈雲浦詩札》 香港中文大学
《呈大臨徴君楷書札》 23×55.5 台北故宮博物院
《送盛高霞等八詩帖》
《淡室詩》 64×27 北京故宮博物院
《靜寄軒詩文》 62.9×23.3 北京故宮博物院
1371年頃行書《自書述懷詩稿冊》 台北故宮博物院 自作詩47首
:憂愁をおび胸がしめつけられるような一河両岸の山水画を繰返し描く
容膝斎図 遠景




平淡な遠山
中景 空白の水面
近景 種類の異なる疎らな樹

岩、
無人の四阿
1.折帯皴(方折の皴、斧劈皴の変化形)
   渇筆 筆数の節約
2.蕭散体 蕭々とした水墨の平遠山水
3.はりつめた孤高の清潔さ、雪冰の心
(1)早年:猶勁、精美
1339年至正三年《秋林野興図》 メトロポリタン美術館 1354自題 傷み激しい
1343年至正三年《水竹居図》 台北故宮博物院 早期青緑細山水
1345年至正五年《六君子図》 上海博物館
 黄公望など題 コピー
(2)中期(漂泊生活):清勁、蕭疏
中年書風転折期1353〜63年:
1353年至正十三年《岸南双樹図》 紙墨 プリンストン大学美術館 題神彩
1354年至正十四年2月15日《雲林春霽(春林遠岫)図》紙墨 73×54.4cm
 北京故宮博物院 コピー 倪瓚長題、王蒙和詩 漁荘秋霽図の作風に近い
1354年至正十四年初冬《松林亭子図》 紙墨 台北故宮博物院 コピー
1355年至正十五年《漁荘秋霽図》 紙墨 上海博物 1372年晩期自題
題:江城風雨歇,筆研晩生涼。囊楮未埋沒,悲歌何慨慷。
  秋山翠冉冉,湖水玉汪汪。珍重張高士,閑披對石床。
 此圖余乙未歲戲寫于王雲浦漁莊,忽已十八年矣。不意子宜友契藏而不忍棄捐,感懷疇昔,因成五言,壬子七月廿日。瓚。

中年書風形成期1363〜69年:屈強簡逸の書風
1363年至正二三年《江渚楓林図》 紙墨 メトロポリタン美術館
1363年2月王繹との合作精品《楊竹西小像》 北京故宮博物院 倪瓚は松石を補
(3)晩期(逸筆草草)1369〜74年:率意、簡逸
1371年明・洪武四年《虞山林壑図》 紙墨 メトロポリタン美術館
1372年明・洪武五年7月《容膝斎図》 紙墨 台北故宮博物院 倪瓚基準作
 画:檗軒翁ために描く 款:壬子歳七月五日雲林生写。
 賛:1374年2年後、檗軒翁に頼まれ潘仁仲に送るために書す
  屋角春風多杏花,小齋容膝度年華。金梭躍水池魚戲,彩鳳栖林澗竹斜。
  斖亹清談霏玉屑,蕭蕭白髮岸烏紗。而今不二韓康價,市上懸壺未足誇。
甲寅三月四日。檗軒翁復攜此圖來索謬詩,贈寄仁仲醫師。且錫山予之故鄉也。容膝齋則仁仲燕居之所。他日將歸故鄉。登斯齋,持巵酒,展斯圖。為仁仲壽.當遂吾志也。雲林子識。

1372年11月《苔痕樹影図》 紙墨 無錫市博物館
《幽澗寒松図》 北京故宮博物院
《筠石喬柯図》 クリーブランド美術館
墨竹:逸気ある墨竹
1373年明・洪武六年顧安との合作《古木竹石図》軸 台北故宮博物院
1374年明・洪武七年《脩竹図》軸 台北故宮博物院 心手相忘、無心の状態
《叢篁枯木図》軸
《雲林画譜冊》 樹木、岩の描き方 倪瓚派の作?

王蒙 1308‐85
[生涯]
呉興 (浙江省湖州) 人 字は叔明、号は香光居士、黄鶴山樵 趙孟頫の外孫
詩文書画をよくし、元朝に理問(低級官吏)として出仕
元末に黄鶴山(浙江省余杭)に「白鶴精舎」を築き30年間隠棲
明朝に仕え山東省泰州の知州
胡惟庸の獄 (1380) に連座して獄死
[作品]
山水画:董源、巨然、趙孟頫に学ぶ 稠密で律動的な様式(倪瓚と対照的)
 1.濃密で過剰な筆致 牛毛皴、墨点
 2.空間恐怖 不安←→平静な家屋、夫婦 隠居のモチーフ
1354年至正十四年《夏山隠居図》 絹本淡彩 フリア美術館 早期の平穏な山水
1366年至正二六年《青卞隠居図》 紙墨 140.6×42.2 上海博物館
自題:至正廿六年四月黃鶴山人王叔明畫青卞隱居圖。
 卞山(呉興西北18里の名山)の趙孟頫の別荘を戦乱で離れる従兄弟趙麟に
 絶えず変化する筆線と墨点 現と幻の交差し膨れ上がるイメージ
詩堂董其昌題:天下第一王叔明畫。筆精墨妙王右軍,澄懷觀道宗少文,王侯筆力能扛鼎,五百年來無此君。倪雲林贊山樵詩也。此圖神氣淋漓,縱瀟灑,實為山樵第一得意山水,倪元鎮退舍宜矣。
来歴:
 趙麟「趙」「魏國世家」「趙生印」「真白齋」四印→
 嘉靖華夏「華夏」白文印→萬歷項元汴「項墨林鑒賞章」「墨林山人」「子京所藏」白文印、「項元汴」「凈因菴主」「墨林秘玩」「項子京家珍藏」朱文印→董其昌→
 康熙梁清標「蒼巖」朱文印→安歧「儀周覽賞」「安氏儀周書畫之章」白文印→乾隆內府→李宗瀚「靜娛室書畫記」朱文印→咸豐、同治狄學耕、狄平子→魏停雲「停雲閣收藏印」朱文印→
民国 朱祖謀、鄭孝胥、羅振玉、金城、陳寶琛、張學良、冒廣生、葉恭綽、吳湖帆等款→上海博物館。
著録:『豐道生書畫題跋記』『清和書畫舫』『珊瑚網古今名畫題跋』『書畫見聞』『平生壯觀』『佩文齋書畫譜』『式古堂書畫匯考』『大觀錄』『墨緣匯觀』『曝書亭書畫跋』『平等閣筆記』『遐庵談藝錄』『上海博物館藏畫』など
『支那名畫寶鑒』『支那南畫集成』『世界美術大系・中國美術』『唐宋元明名畫大觀』『中國名畫第一集』などに図版
1368年以降《具区林屋図》 紙本著色 台北故宮博物院
 具区(太湖)林屋(道教十大洞天の一つ)
 友人日章のために 上部欠けているか(参照:明文伯仁の上博蔵コピー)
書:趙孟頫の家学を継承、よりまろやか
行書《愛厚帖》頁 北京故宮博物院




参考書
山水合璧:黄公望與富春山居圖特展 何伝馨編 台北国立故宮博物院 2011年
楚黙書画文集(全3册)(倪雲林研究;書法解釈学;中国画論史) 百家 2002年
中國書法全集 46 康里巙巙・楊維驕E倪瓚 榮宝斎 2000年
世界美術大全集 東洋編7 元 海老根聰郎、西岡康宏編 小学館 1999年
故宮博物院3 元の絵画 小川裕光、救仁郷秀明 NHK出版協会 1998年
島田修二郎著作集2 中国絵画史研究  中央公論美術出版社 1993年
鈴木敬 中国絵画史 中之二 元 吉川弘文館 1988年
朱仲岳 倪瓚作品編年 上海人民美術出版社 1991年
ジェイムズ・ケーヒル/新藤武弘訳 江山四季 元代の絵画 明治書院 1980年
渡辺明義「倪雲林年譜」『国華』829・830、1961年
基本史料
元 湯垕 画鑑 1330頃 米芾の影響の強い絵画批評
元 夏文彦 図絵宝鑑 1365序 至元二年1336)までの1500余人の画家の略伝
元末呉太素/島田修二郎校註 松斎梅譜 広島市立図書館編 1988年
参考サイト
故宮博物院の名蹟 二玄社
中国古代名画 
中国絵画千年巡礼
書法空間 元代書法(中国語簡体字) 黄公望 呉鎮 倪瓚 王蒙
おすすめ展覧会
「山水合璧─黄公望與富春山居圖特展」
2011年6月から9月 台北国立故宮博物院
中国絵画史上の大名物である元代黄公望の《富春山居図巻》と、その巻頭であった浙江博物館《剩山図巻》を同時に展示 →作品リスト
第一期:2011年6月2日-7月31日
 「黃公望の書画」「富春山居図の模本や臨本」「黃公望の師承と交遊」など元時代中心(黄公望《富春山居図巻》と《剩山図巻》はこの期間のみ)
第二期:2011年8月2日-9月5日
 「明清時期黃公望の影響」「黃公望の伝称作品」など明清時代中心。
公式facebook:山水合璧−黃公望與富春山居圖特展
関連講演:富春山居圖演講(傅申、王耀庭)







TOP△



 元時代 元末四大家 文人画の成立  2002.11.3作成 

琴詩書画巣 | 古琴の調べ | 中国絵画 | 詩・書 | 中国文人の世界 | 北京信息 | パリ信息 | リンク