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 飛鳥・奈良時代の絵画 仏画と世俗画

仏教絵画の主題
[インド、中国六朝で流行した主題]
仏伝(本行経変 釈迦の生涯の物語、変文による絵解きを行う、以下同様)
 八相成道 岩山時西面壁画仏本行経変など

  1. 下天 スメーダ 兜率天から人間界に下る
  2. 託胎 (たくたい) 白象に乗って摩耶夫人(スッドーダナ王の妃マーヤ)の胎内に宿る
  3. 誕生 ルンビニ 夫人の脇の下から生まれ「天上天下唯我独尊」と唱える 金剛宝座塔
  4. 出家 四門出遊 東門で老人、南門で病人、西門で死人、最後の北門で修行者に会う
  5. 降魔 ボードガヤー仏陀伽耶
  6. 成道 (じようどう)
  7. 説法 サールナート鹿野苑 初転法輪(中道、四諦、八正道)祇園精舎 霊鷲山説法
  8. 涅槃 クシナガラ拘尸那掲羅の沙羅双樹の下 仏弟子囲繞

本生(ジャータカ 釈迦の前生の物語)
 摩訶薩埵本生(捨身飼虎)敦煌北魏254窟南壁 玉虫厨子など
 波羅門本生(施身聞偈)etc.
譬喩(ひゆ)物語図(アバダーナ 仏弟子や敬虔な信者の過去現在の物語)
 ナンダ出家縁etc. アジャンター第16窟壁画など

[中国隋唐の寺院壁画で流行した主題]
変相(大乗経変 大乗仏教経典の説話部分の絵画化、変文による絵解き)
 阿弥陀経変と観無量寿経変
 浄土変相図(西方浄土変、霊山浄土変、弥勒浄土変)、
 東方薬師経変約、弥勒経変、法華経変、維摩詰 (ゆいまきつ) 経変、

飛鳥時代の仏教絵画
604年 画師(えし) 聖徳太子により制定 肖像、荘厳、建築の彩色

●法隆寺 玉虫厨子 7C中 彫刻・絵画・厨子併せて仏教の荘厳宇宙を表す
 高2.3m 飛鳥時代の建築様式 推古天皇の御物 本尊は鎌倉時代初に紛失?
 柱や入口横木 銅の透彫り金具のすき間に玉虫の羽
 檜造 黒漆塗り+朱(漆絵)、青緑、黄(油絵)? 明治には「密陀絵」
(聖徳太子の娘、片岡御祖命(みおやのみこと)発願説、643年に自害した上宮王家一族供養のため?)
捨身飼虎図 [宮殿部]
正面扉 二天
左右扉 菩薩
背面 「霊鷲山説法図」
[須弥座]
正面 「供養図」   宮殿部の本尊を供養するためのデザイン
左側面「施身聞偈図」 鬼に身を投げ教えを乞い悟りを得る 釈迦の前生の物語
右側面「捨身飼虎図」 身を投じて虎の餌食になる 自己犠牲の物語 異時同図法
背面 「須弥山図」
 「C」字型山岳は漢六朝初山水画萌芽期の古様 「岩=龍」のダブルイメージ

●法隆寺 伝橘夫人厨子漆絵 7C末-8C初 阿弥陀浄土の荘厳 初唐の影響

●法隆寺金堂壁画
アジアの古代仏教絵画を代表する作
彫刻を中心として壁画・建築空間が一体となり釈迦浄土の荘厳宇宙を表す
法隆寺再建以降690-700年初頃 1949年1月26日焼損(飛天図のみ未損)
共同制作 厚さ15cmの壁に白土下地 粉本→(念紙法で転写)→
 1.線の墨描き
 2.彩色(白、赤3、黄2、緑青、群青、紫) 濃淡の隈取り
 3.鉄線描の朱線で描き起し(師匠格が担当)

法隆寺金堂壁画 1号壁 釈迦浄土図 2壁 半跏思惟菩薩 3壁 観音菩薩立像 4壁 勢至菩薩立像 5号壁 半跏思惟菩薩 6号壁 阿弥陀浄土図 7号壁 聖観音菩薩立像 8号壁 文殊菩薩座像 9号壁 弥勤浄土図 10号壁 薬師浄土図 11号壁 普賢菩薩座像 12号壁 十一面観音菩薩立像 [大壁面]312×266
 四仏浄土図 仏説法図
1号壁 釈迦浄土図(南)
6号壁 阿弥陀浄土図(西)
西方阿弥陀浄土の世界 金堂壁画中最もすぐれる
・中央に阿弥陀如来 結跏趺坐 通肩 説法印 背屏 蓮華座 風にゆれる天蓋の房
・左右に観音・勢至菩薩
・画面下方蓮池に小童子形菩薩17体、上部山岳上に8体 計25体
・阿弥陀足下に一対の透明な蓮の蕾に入った胎生(浄土に生まれ変わる人)
 →比較:敦煌第57窟南壁 初唐 樹下説法図
9号壁 弥勤浄土図(北)
10号壁 薬師浄土図(東)

[小壁面]312×158 向い合う壁面で左右対称
2号壁 半跏思惟菩薩 ←→5号壁 半跏思惟菩薩
3号壁 観音菩薩立像 ←→4号壁 勢至菩薩立像
8号壁 文殊菩薩座像 ←→11号壁 普賢菩薩座像
7号壁 聖観音菩薩立像←→12号壁 十一面観音菩薩立像

[大小壁上部]羅漢図(焼失) 山中に修行する羅漢 模写が残る
[内陣] 飛天図小壁20面(現存) 法隆寺収蔵庫

法隆寺五重塔壁画6面 収蔵庫 金堂3,4,5,7,8,12号壁菩薩と同図様

奈良時代の仏教絵画
◎栄山寺八角堂装飾画 天平宝字八年764年頃 天平盛期様式の仏画
  藤原仲麻呂がパトロン、武智麻呂の供養
釈迦霊鷲山説法図 8C中 麻布彩色 107×143.5 ボストン美術館(明治に流出)
●麻布菩薩 8C中 正倉院 白画(墨線のみの画) 肥痩と速度のある流暢な線
●吉祥天像 771または2 麻布彩色 53.3×32 薬師寺 爛熟した女性像

墓室璧画
●高松塚古墳壁画 7C末-8C初 初唐の影響(朝鮮経由) 1972年発見
 石室265×103×高113cm(人物 高約50㎝)
              玄武高松塚古墳壁画 玄武
              女官┌─┐女官4
 天井に星宿(星座)  月 白虎│ │青龍高松塚古墳壁画 青龍 日
              男官└ ┘男官4
               (朱雀
 青色は西域産ラピスラズリ? 白虎の線は藍?が退色
 1980、2001年頃カビ等による劣化激し→2007年石室を解体→2020年修復終了
高松塚古墳壁画西壁仕女図 1972年→2006年→2019年

●キトラ古墳壁画 7C末-8C初 初唐の影響(朝鮮経由) 1983年発見
 石室240×104×高124㎝ →文化庁 高松塚古墳及びキトラ古墳の対比表
 星宿、日月、四神-青龍、朱雀、白虎、玄武がそろう →Kitora-Atlas画像
 →比較:高句麗の四神
   6C集安五盔墳第4号墓四神、7C江西大墓・中墓四神 年表 map

奈良時代の世俗絵画
鳥毛立女(とりげりつじょ)屏風 752頃 紙本墨画彩色 6扇各約136×56 正倉院
鳥毛立女第一扇 鳥毛立女第二扇 鳥毛立女第三、四扇 鳥毛立女第五、六扇  衣を鳥毛で飾る
 盛唐の流行(安楽公主の百鳥毛裙)
 日本人画師による樹下美人図
第一扇 立女 傷み
第二扇 立女
第三扇 立女 豊満 鳥毛残る 瞳の濃墨を削った白地で輝きを表す 小鳥3羽
第四扇 倚坐 髪の生え際の毛描き 鼻筋の白暈 柔和な表情
第五扇 倚坐 豊満
第六扇 倚坐 顔以外補紙
 →比較:韋家墓《仕女図》6曲屏風 8C後 陝西省長安県

騎象胡楽図 琵琶捍撥面 8C中 40.5×16.5 油画? 正倉院
 琵琶のバチがあたる面に描かれた小品 盛唐山水画の水準を伝える

参考書
奈良六大寺大観 法隆寺 岩波書店 1970-73年(1979年-再刊)
国宝 高松塚古墳壁画 文化庁監修 中央公論美術出版 2004年
 2002年9月から翌年4月撮影の高精細デジタル写真による図版と研究報告
国宝 高松塚古墳壁画―修理と保存― 文化庁 1987年
 300部限定 すでにカビ等による劣化が進行
上原和 玉虫厨子 飛鳥・白鳳美術様式史論 吉川弘文館 1991年
島田修二郎「鳥毛立女屏風」 日本絵画史研究 中央公論美術出版 1987年
参考サイト
国宝高松塚古墳壁画修理作業室の公開について 無料、要予約
キトラ古墳壁画の公開 無料、要予約
キトラ古墳壁画保存管理施設 キトラ古墳壁画体験館 四神の館1階
飛鳥資料館 奈良文化財研究所 飛鳥資料館のサイト
 高松塚古墳壁画 キトラ古墳壁画
文化庁 高松塚古墳・キトラ古墳関係の検討会等
法隆寺金堂壁画写真ガラス原板のデジタル画像
 1935年便利堂撮影白黒写真の高精細画像
法隆寺金堂壁画 東京大学総合研究博物館のサイトから
上淀廃寺 鳥取県上淀廃寺から発掘された白鳳の壁画、塑像の紹介
正倉院 宮内庁のサイトから

正倉院展
毎秋10月25日-11月10日頃に開催されます 会期中無休 奈良国立博物館
1946年 第1回
2000年 第52回  2001年 第53回  2002年 第54回  2003年 第55回 
2004年 第56回  2005年 第57回  2006年 第58回  2007年 第59回 
2008年 第60回  2009年 第61回  2010年 第62回  2011年 第63回
2012年 第64回  2013年 第65回  2014年 第66回  2015年 第67回
2016年 第68回  2017年 第69回  2018年 第70回  2019年 第71回
2019年御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」東京国立博物館  令和元年10月14日(月・祝)~11月24日(日)
2020年 第72回  2021年 第73回  2022年 第74回



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 日本美術史ノート 飛鳥・奈良時代の絵画   2002.5写 

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