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 中国絵画史ノート 五代 水墨山水画 花鳥画の発展

五代の絵画
[五代]華北   907後梁 →唐 →晋 →漢 →周960 ┐
[十国]四川  →903蜀(唐の文化を保存)    965 →北宋
    江南     呉越 937南唐         975┘

唐宋にかけての絵画創造の構造的転換
  五代
技法 着色画 水墨画
主題 道釈人物画 山水画
形態 宗教画 観賞画 タブロー
形式 壁画 巻物、掛軸
主体 共同制作 無名 個性 サイン
社会的位置 技芸 職人 芸術 文人
(表は重点を強調したものであり、全てがすっかり変ることを意味しない)

五代の山水画家 華北系 荊浩、関同
山水画の様式 技法 水墨による写実
       視点 大観的
       表現 構築的
各孤立して活動 王朝に仕えず
荊浩 [生涯] 唐末→後梁10C初
字浩然 河南沁水(河南省済源市)人 儒学者 山水樹石が得意
開封双林寺に宝陀落観自在菩薩一壁を描く
唐末の乱を避け太行山洪谷に隠棲
鄴都(河北省臨漳)青蓮寺の大愚のために双松図6幅を描く
画論『筆法記』(山水訣) →原文
 真と似 六要:気韵思景筆墨 神妙奇功 筆の四勢:筋肉骨氣 水暈墨章
 呉道子 有無墨┐
 張璪  有無筆┘ 荊浩は両者の長所をとる(郭若虚『図画見聞志』)
[伝承作品]
匡盧図 186×107 台北故宮博物院 元の復古的コピー? 山頂の直皴
 参考:924年節度使王処直墓山水壁画 167×220 河北省保定市曲陽 直皴
10C後 葉茂台遼墓《山水図》 107×54 遼寧省博物館
 最古の軸装 直皴 「琴棋書画」のうち琴棋の主題
雪景山水図 138×76cm ネルソン美術館 *1930年代墓中より?  白粉の雪

関同
五代十国943年頃 五代初10C前 長安 荊浩の弟子
岩石、枯木を得意にする 胡翼(こよく)に画中人物を描かせる
[伝承作品]
秋山晩翠図 台北故宮博物院 *北宋コピー 直皴
関山行旅図 台北故宮博物院 *宋のコピー
山谿待渡図 台北故宮博物院  宋のコピー

李成919-967
字咸煕 唐宗室の末裔 青州営丘(山東省臨 県)
 →北宋山水画李成 参照


五代の山水画家 江南系 董源、巨然
┌華北 筆 岩石 構築的 明晰な空間 実 内陸乾燥性気候…小麦 白酒 
└江南 墨 空気 自然さ 霧霞、湿度 虚 モンスーン気候…米  黄酒 
                     東アジアの衛星写真(今日)
南唐
937年 李昪(りべん先主)→李璟(りけい嗣主)→李煜(りいく後主)976年滅びる
保大年間943―947年初 宮中に翰林図画院(かんりんとがいん 画院)を設立
主な南唐画院画家(例にあげた作品は伝承作品):
供奉
衞賢(長安人)《高士図》 北京故宮博物院 梁鴻、孟光の故事
待詔
王齊翰《勘書図》 南京大学 徽宗題“王齊翰妙筆” 屏風の画中画は没骨山水
周文矩《重屏会棋図》北京故宮博物院、《文苑図卷》北京故宮博物院
 《宮女図巻》 絹本白描淡彩 北宋末コピー?後に4つに分割される
   ベレンソン旧蔵本(巻頭)→クリーブランド美術館1140年張澂跋
   →フォッグ美術館メトロポリタン美術館本  (江戸時代全巻模本
 《瑠璃堂人物図》 戦筆(ふるえる線)が得意
顧閎中《韓煕載夜宴図卷》 北京故宮博物院 宰相韓煕載の南唐滅亡前の様子
韓煕載夜宴図
韓煕載夜宴図
 南宋史彌遠「紹勳」葫蘆印 南宋孝宗・寧宗朝(1163-1224年)頃の模本か
学生: 趙幹《江行初雪図巻》 台北故宮博物院 江南のアンチーム 真筆か

董源
[生涯]
唐末生 鐘陵(南京西北あるいは江西省南昌)人 字叔達 “董北苑”
(中主李璟が南昌に遷都した時、宮廷に入る?)
南唐 北苑副使 御用茶場と園林の管理
947年元日 大雪の時、李璟は群臣を楼に召し詩宴を開いた。その時の様子を《賞雪図》として董源と肖像画家高冲古、仕女画家周文矩、界画家朱澄、花鳥画家徐崇嗣に合作させた 董源は雪竹寒林を担当
南唐末には亡くなる
[作品の特徴]
1.落照、晩景、遠嵐 特定の時間の気象と光 中唐溌墨画家からの展開
およそ董源と巨然の画は、皆遠くから見るのがよい。用筆は草々として、近くから視れば物象に類せず、遠くから観れば、景物は燦然として、幽情遠思、異境を見るようだ。
董源の描いた落照図は、近くから見れば功ないが、遠くから見れば、村落杳然として深遠。ことごとく晩景であって、遠景の頂きはさながら照返しの色があるようだ。これがすぐれた所だ。(北宋 沈括『夢溪筆談』)
2.江南の丘陵と水郷地帯の空間
地平線が画面上部に消える 平遠俯瞰視 深く大きく横に拡がる全景の構図 長卷
3.江南のモチーフ
ゆるやかな山や土坡 山頂に礬頭(結晶体のような巨石群 中国平地の土の山に典型) 高い樹 白ぬきの幹 蔓 下草 蘆 湖水 漁者、渡客など山村漁民の生活と情緒(華北神仙山水と異なる意境)
4.披麻皴(麻の繊維が開いたような皴)と点皴
 江南丘陵の綿々と平淡に続く土質の表現
(唐墓壁画の皴 かすれ筆で一掃き→淡墨(淡彩)で染める 北方山水の表現
は山水画の筆墨法の一種 山や石のモデリング、幹の皮紋などの質感をだす)
5.水墨・着色2種の技法“水墨類王維,着色如李思訓”(『図画見聞志』)
6.山水画の他に人物、龍水、牛虎などの画も得意

北宋末 米芾の董源再評価
1.平淡天真 自然さ、真意がある
2.筆は粗く草書のようだが、清趣があり俗でない
3.一辺の江南 (峯巒出没、雲霧顕晦、抜幹勁挺、溪橋漁浦、洲渚掩映)

[伝承作品]
◎《寒林重汀図》軸 絹本墨画淡彩 180×116 黒川古文化研究所
  宋時代のコピー 上にあげた董源画の特徴を最も良く伝える
 「緝煕殿宝」印(1233年頃) 詩塘:董其昌「魏府収蔵董元画天下第一」書
《夏景山口待渡図卷》 絹本墨画淡彩 50×320 遼寧省博物館
夏景山口待渡図
 原本(河泊娶婦図?)AB部分のコピー “之”字形の山形 細部描写精細
 1330年柯九思跋、「天暦之宝」(1328-1330年頃)、明「司印」半印
《瀟湘図卷》 絹本墨画淡彩 50×141.4 北京故宮博物院
瀟湘図
 原本(河泊娶婦図?)のBC部分のコピー 「司印」半印、董其昌跋
 披麻皴、点子皴 点景人物に白粉と青、紅などの色 平板な描写
《夏山図卷》 絹本墨画淡彩 49.2×311.7 上海博物館
夏山図
 土坡や山脚に披麻皴、山の輪廓に雨点皴
 董其昌跋“董源画卷”隔水“董北苑夏山図神品”
《龍宿郊民図》軸 絹本着彩 183×121 台北故宮博物院
 青緑山水 2龍舟が競走する点景 端午節? 董其昌跋

《溪岸図》軸 絹本墨画淡彩 221×109 ニューヨークメトロポリタン美術館
“北苑副使臣董源”款 元代“柯九思印”收藏印
 目黒黄鶴堂の修復表装 絹の破損個所
 1999年12月溪岸図真贋論争 未決着
 ┌真派(董源真作説から10世紀古画説まで広く含む)
   方聞、王季遷、マクセル・ハーン、石守謙、楊新など
 └贋派(張大千1899-1983の贋作説)
   ジェームズ・ケーヒル、シャーマン・リー、古原宏伸

巨然
[生涯] 
1.南唐時代:江寧(南唐の都、南京)人 開元寺の僧となる
 (“受業于本郡開元寺”劉道醇『聖朝名画評』)
2.董源に学ぶ
3.北宋時代:975年南唐滅亡 李煜に従い、南唐画院の徐崇嗣(徐煕の孫)、
 董羽など北宋の首都開封へ、北宋画院へ入る
 巨然も共にし、開宝寺の僧となる
4.980年頃 学士院北壁に煙嵐暁景の山水壁画を描く
[作品の特徴]
1.董源風 煙嵐、湿潤な江南の野逸の景趣
 長披麻皴 礬頭(卵石) 白い樹幹 草蔓 蘆
2.華北系山水の要素 険しい高山を含む構図 倣李成寒林山水 立軸が多い
“古峰峭拔,宛立風骨;又于林麓間多用卵石,如松柏草竹,交相掩映,旁分小徑,遠至幽墅,于野逸之景甚備。”(劉道醇『聖朝名画評』蔡員外《故事山水》二軸)
3.董巨派として江南系山水画を代表、後代へ大きな影響
 北宋末-南宋初の江参、元の呉鎮、黄公望、明の沈周、文徴明など
[伝承作品]
《層崖叢樹図》軸 絹本墨画 144×55 台北故宮博物院
 北方山水の険しい山に野逸の景 最も巨然に近い
《蕭翼賺蘭亭図》軸 絹本墨画淡彩 144×60 台北故宮博物院
その他の巨然派の作
《万壑松風図》軸 絹本墨画淡彩 201×78 上海博物館 張大千模本
《溪山蘭若図》軸 絹本墨画 186×58 クリーブランド美術館 米芾題簽
《秋山問道図》軸 絹本墨画 156×77 台北故宮博物院
 “蔡京珍玩”印(墨印)、小「司印」半印 元代巨然派?
《山居図》軸 68×41 「司印」半印 大阪斉藤家旧蔵


五代の花鳥画 徐煕、黄筌

蜀 黄筌
中和元881年 唐僖宗 黄巣の乱により四川の蜀へ逃れる
人物画 孫位、張南本はそのまま土着 保守的なものがそのまま栄える
花鳥画 黄筌 …黄氏体 鈎勒填彩(こうろくてんさい)
 伝黄筌《写生珍禽図卷》 北京故宮博物院
 黄居ァ(黄筌の子)《山鷓棘雀図》 台北故宮博物院

南唐 徐煕
花鳥画 徐煕 …徐氏体 没骨(もっこつ)
 伝徐煕《雪竹図》 上海博物館
975年南唐滅亡、画院の徐崇嗣(徐煕の孫)らが北宋画院へ黄氏より遅れて入る



参考書
世界大美術全集 東洋編5 五代・北宋・遼・西夏 小学館 1998年
劉道醇『五代名画補遺』『聖朝名画評』 五代絵画の基礎史料
郭若虚『図画見聞志』 張彦遠『歴代名画記』の後を継ぐ中国絵画の正史
矢代幸雄 水墨画 岩波新書 青版740 1971年 荊浩『筆法記』の解説
Along the Riverbank, Chinese Paintings from the C. C. Wang Family Collection By Maxwell K. Hearn and Wen C. Fong 王季遷コレクション展から《溪岸図》をはじめ12件の解説図録
Issues of Authenticity in Chinese Painting  Edited by Judith G. Smith and Wen C. Fong 2000 1999年12月溪岸図論争の記録
芸術新潮2002年5月号 張大千の超絶絵画術 新潮社 溪岸図論争の紹介
参考サイト
大觀 北宋書畫 (960-1127) 2007年台北故宮博物院での大展覧会のサイト、超おすすめ
《溪岸図》真偽之争(GB) 上記溪岸図論争について中国の意見を集めたもの
Metropolitan Museum Holds Chinese Art Symposium
 The City Reviewのサイトから、上記溪岸図論争のある側からの紹介
展覧会
第100回記念展観 中国美術清玩‐飛香館に集った文化の粋
2008年10月18日(土)-11月16日(日) 黒川古文化研究所
伝 五代・董源《寒林重汀図》の他、中国の明・清代の文人画など



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 中国絵画史ノート 五代 水墨山水画 花鳥画の発展   2002.5写 

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