美術史入門

  (英)art history、(仏)histoire de l'art、(独)Kunstgeschichte、(日)(中)美術史

美術史の歴史
(参考書:ヴァーノン・ハイド・マイヤー『美術史の歴史』 ブリュッケ 2003)

古代
(1) 旅行記・c案内記類:パウサニアス『ギリシア案内記』
  中世の巡礼案内、ルネサンス以降の都市案内記、現代の展覧会カタログへ
(2) 芸術家のエピソード類:大プリニウス『博物誌』

ルネサンス
G.バザーリの『芸術家列伝』[1550、第2版1568] 最初の体系的な〈美術史〉
列伝体:(蘭)C.ファン・マンデル、(独)J.フォン・ザンドラルト、(伊)G.ベローリ等
18世紀
J.J.ヴィンケルマン『古代美術史』[1764] 様式の原理に基づく最初の美術史

19世紀
G.ゼンパー『技術による諸芸術様式論』[1861-63]
ヘーゲル哲学の影響による芸術発展の歴史、発展史観
H.テーヌ『芸術哲学』[1865] 芸術を民族、環境、時代の条件に還元、環境決定論
19世紀後半
G.モレリ、B.ベレンソン、M.J.フリートレンダー 作品鑑識による〈戸籍調べ〉美術史の基礎
セルー・ダジャンクール『モニュメントによる美術史』[1811-29] 写真図版の利用へ

20世紀

様式史(形式分析)
 様式による発展史観(歴史のなかで美術作品の視覚要素がどう変わっていったか)
A.リーグル『様式の問題』[1893] 、『晩期ローマ工芸美術論』[1901] 文様の発展の法則
 触覚的なものから視覚的なものへ
H.ヴェルフリン『美術史の基礎概念』[1915]  5つの基礎概念
 [1]守屋謙二訳、岩波書店、1936、[2]海津忠雄訳、慶應義塾大学出版会、2000

 ルネッサンス                  バロック
 1.「線的」                    →「絵画的」
 2.「平面的」                   →「深奥的」
 3.「閉じた形」                  →「開かれた形」
 4.「多数」                    →「統一」
 5.「絶対的明瞭性」                →「相対的明瞭性」
「5つの基礎概念」概念図
H.フォシヨン『形体の生命』[1934] 様式分析と展開の方法論

図像学(内容分析)
 作品の思想、寓意、象徴的意味の解読(美術史を精神史的な背景との関係で考察)
マール 図像学的研究
M.ドヴォルシャック 精神史的研究
M.ドヴォルシャック/中村訳『精神史としての美術史』[1924] 岩崎美術社 1996
アビ・ヴァールブルク Aby M.Warburg 1866-1929
 図像学創生期の拠点ウォーバーグ研究所の基を築いた人
エルヴィン・パノフスキー Erwin Panofsky 1892-1968 イコノロジー研究
  (図像解釈学:図像の背景にある文化の普遍的原理の把握)
第1段階:図像の認識、記述 (preiconographical description)生活経験による
第2段階:図像の意味の分析 (iconographical analysis)文献知識による
第3段階:図像学による解釈 (iconological interpretation)総合直感による
パノフスキー/浅野他訳『イコノロジー研究』[1939] 美術出版社1971
                        上下 ちくま学芸文庫2002
イコノロジー分析の例:デューラー《メランコリアⅠ
 第1段階:頬杖をした天使など、周囲に小道具
 第2段階:古代の世界観である四元素の一つ、メランコリー(憂鬱質)を表す
 第3段階:メランコリーは、中世の暗い気質からルネッサンスの創造の源泉へ
クリバンスキー、ザクルス、パノフスキー/田中他訳『土星とメランコリー』[1923] 晶文社1991

パノフスキー/木田元他訳『〈象徴形式〉としての遠近法』[1924-5]哲学書房1993
 一点透視遠近法 1.一つの視点(実際は複眼)
         2.固定した視点(実際は移動したりする)
         3.対象を平面でたちきる(実際は球面視野)

パノフスキー/中森義宗,清水忠訳『ルネサンスの春』 思索社 1973
パノフスキー/細井訳『芸術学の根本問題』[1974 2ed] 中央公論美術出版 1994
W.J.T.ミッチェル/鈴木聡,藤巻明訳『イコノロジー』[1986]  勁草書房 1992
 副題:イメージ・テクスト・イデオロギー イメージの学際的研究方法について

第2次大戦後
美術史の基礎固め
 赤外線、X 線や化学分析などの科学的方法を導入した作品調査
 美術館でのおびただしい展覧会、作品のカタログ化の蓄積
隣接諸科学の方法と成果を取り入れた美術史研究
 心理学、社会学(制度史や社会史など)、文化人類学、構造主義哲学などによる

ゴンブリッチ Ernst Hans Josef Gombrich 1909-
E.H.ゴンブリッチ/瀬戸訳『美術と幻影』[1975 5ed] 岩崎美術社 1979
E.H.ゴンブリッチ/岡田温司,水野千依『規範と形式―ルネサンス美術研究』[1966] 中央公論美術出版 2000
E.H.ゴンブリッチ/[The Story ef Art,1950 1ed] 西洋美術史通史
 [1]友部直訳『美術の歩み』上・下[The Story ef Art] 美術出版社 1983
 [2]田中正之他訳『美術の物語』[1995 16ed] ファイドン 2007

ミッシェル・フーコー/渡辺一民,佐々木明訳『言葉と物』[1966] 新潮社 1974
ロラン・バルト/花輪光訳『明るい部屋』[1980] みすず書房 1985

ダニエル・アラス/宮下志朗訳『なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険』[2000] 白水社 2002
H.ベルティング/元木訳『美術史の終焉?』[1987] 勁草書房 1991
M.ロスキル/中森訳『美術史とは何か』[1989 2ed] 日貿出版社 1987
J.バジャー/伊藤訳『イメージ Ways of Seeing-視覚とメディア』[1972] パルコ出版 1998
『講座日本美術史』全6巻 東京大学出版会 2005-
『表象のディスクール』全6巻 東京大学出版会 2000-
『絵は語る』シリーズ 平凡社 1993-96
『作品とコンテクスト』シリーズ 三元社 1992-
『アート・イン・コンテクスト』シリーズ みすず書房 1978-81


中国、日本
中国
「書画」という芸術観による画史、画論、作品論のおびただしい蓄積がある
張彦遠『歴代名画記』[9世紀] バザーリ『芸術家列伝』にあたる画史の名著
   より詳しくは中国絵画参考書を参照
日本
狩野永納『本朝画史』[1691] 日本初の総合的な画史、画論 
日本近代に西洋「美術」が導入されて以降、「自立した絵画」観による美術史が生まれる
矢代幸雄/高階秀爾他訳『サンドロ・ボッティチエルリ』 岩波書店 1977
   より詳しくは日本美術史参考書を参照



美術史概説書
高階秀爾『名画を見る眼』 正、続 岩波書店 1969-1971 岩波新書
 ファン・アイクからモンドリアンまで29枚の絵を取り上げ明快に解説
高階秀爾『美の思索家たち』 青土社 1983
 20世紀を代表する18人の美術史家の代表著作と方法論を明晰に解説
高階秀爾『日本美術を見る眼-東と西の出会い』 岩波書店 1996

ケネス・クラーク Kenneth M.Clark 1903-83
K.クラーク/高階秀爾訳『絵画の見かた』[1960] 白水社 1977
K.クラーク/河野徹訳『芸術と文明』[1969] 法政大学出版 1995
 BBCで放映された名解説、日本語版ビデオ『西洋美術史探訪』13巻丸善出版がある
K.クラーク/佐々木英也訳『風景画論』[1949] 美術出版社
 E.H.ゴンブリッチ「ルネサンスの芸術理論と風景の登場」『規範と形式』(上記)も参照
K.クラーク/高階秀爾,佐々木英也共訳『ザ・ヌード:裸体芸術論』[1956] 美術出版社 1971

★E.H.ゴンブリッチ/[The Story ef Art,1950 1ed]
 田中正之他訳『美術の物語』[The Story ef Art,1995 16ed] ファイドン 2007
 一人の美術史家の一貫した美術史観による西洋美術史の通史
H.W.ジャンスン/村田,西田監修『美術の歴史』[1961版] 美術出版社 1990
 [1971版]木村,辻訳 創元社1980、[1971版]木村,藤田訳 創元社2001

マルシア・ポイントン『はじめての美術史』[第4版1997] スカイドア 1995
『増補新装(カラー版)西洋美術史』高階秀爾監修 美術出版社
 各章ごとに執筆者が交代する欠点
ジェイムズ・ホール/高階秀爾監修『西洋美術解読事典』 河出書房新社
 彫刻や絵画にみえる図像の主題や象徴を解説
『世界美術大全集』 小学館 1992-
 現時点での最新の美術全集 巻末の参考文献から各時代の美術史へ
『新潮世界美術辞典』 新潮社 1985
 日本・中国にも比較的偏りのない美術辞典、これに代わる出版はまだない



美術史リンク

リンク集
インターネットミュージアム 展覧会情報 特に「取材レポート」が秀逸
アートスケープ 凸版印刷のアート系サイト
 全国ミュージアムデータベース
美学の部屋 関西学院大学加藤哲弘先生の美学美術史学関係リンク集
リンク集 日本大学木村三郎先生の西洋美術史リンク集
神々の故郷とその神話・伝承を求めて 小澤克彦先生の古代ギリシア美術
美術関係各種研究資料データベース 東京文化財研究所のサイト
美術史リンク集 ニューヨーク在住の西洋美術史留学生のサイト
「西欧美術史学」の歴史について 山口大学藤川哲先生の授業用サイトから
フランス文化省美術史データベース フランス国立美術館総局の壮大なリンク
 JOCONDE 全フランス美術館収蔵品14万点のデータベースと、24000件の画像
 NARCISSE Network of Art Research Computer Image SystemS in Europe による保存科学分野の画像データ検索
 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール LE TRICHEUR(いかさま師)の例
Artstor The Andrew W. Mellon Foundation によるアメリカの美術館を中心とした160万点に及ぶ高精細画像アーカイブ 研究機関などから登録可

西洋美術史画像サイト
Web Gallery of Art ハンガリーのサイト 西洋中世からバロックまでの彫刻絵画12,400点の画像と解説
Google Art Project 世界の美術館の中を散歩するように作品にふれるというグーグル・アートプロジェクト。2011年より開始、拡大中
Haltadefinizione 伊HAL9000による超高解像度画像公開プロジェクト
 ダ・ヴィンチ「受胎告知」など161億画素(1平方mmのレベル)で鑑賞できる
Bestiaire 中世写本にある動物寓話の楽しい図像 入門者向き
THEOI GREEK MYTHOLOGY & THE GODS ギリシア神話図像辞典 古代彫刻辞典
AD79 ポンペイ建築と壁画の詳細な画像
Antikensammlung 古代彫刻など考古品の画像 検索は不便
Artcyclopedia 西洋美術を中心とした画像百科事典
World Art Treasures スイス J.E Berger のサイト
西洋、エジプト、中国、日本などアジアの美術品や遺跡の10万点に及ぶ画像
Artchive Mark Hardenによる画像集
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 美術史入門      2004.10.15写 

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