査阜成(1895〜1976) 『琴学文萃』より
古琴の歴史
古琴の音域
古琴の第1弦の最低音から6弦までの
1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7 . . . . . . .
1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 7
" " " " " " " ' ' ' ' ' ' '
C D E F G A H C D E F G A H C D E F G A H . . . . . . .
C D E F G A H C D E F G A H C D E F G A H a d e f g a h
" " " " " " " ' ' ' ' ' ' '
この4つのオクターブは、全てよく使われます。4徽から1徽の按音はあまり使われませんが、この徽の間の
古琴の技法と琴譜
古琴は右手で「弾」じ、左手を「按」じ(押さえ滑らし)て演奏します。古琴の楽譜はすでに1800年の歴史があります。さまざまな弾と按の弾き方を言葉にし、簡単な符号にし、古琴専用の楽譜、琴譜が書かれてきました。最も早くは2世紀、漢時代の人たちが蓄積した演奏技法を伝え広めるために統一された言葉があります。6世紀の六朝の人々は、この種の文字による指法を使って写譜しています。以後、こうした文字譜による指法はしだいに改良し簡単にされ、13世紀の宋時代には定型化されていました。こうした古琴の譜は、当時「半字譜」と呼ばれましたが、今は「
古琴の減字譜の譜字は、正字と傍字の2つがあります。正字の上半分は、左手の指と徽の位置を表します。下半分は右手の技法と第何弦かを表します。傍字は、左手の経過音・滑音・装飾音などの技法と特殊なリズムを表します。例えば、
古琴減字譜
数字譜 2 3 5 2 - | 5 6 .
数字譜 2 3 5 2 - | 5 6 1 5 - |
正字の
傍字の「二上八」は、10徽を弾いた余音を持続しながら左手の名指を、8徽まで2度滑らし、2つの経過音をつくる、ことをいいます。
正字
傍字
正字
正字
正字
正字
傍字
古琴の指法は、千年あまりの累積の中で1000以上にわたっていますが、近代になって常用されるのは100にみちません。初めて学ぶ人のために、下記に基本的なものをあげます。
よくつかわれる減字 →『秋月琴譜』音色速度リズム参照
右手の指法 →『秋月琴譜』右手指法参照
左手の指法 →『秋月琴譜』左手指法参照
以上の減字はよく使われるものを集めただけですので、さらに見知らぬ減字が出てきた時には、他のさまざまな琴譜を参考にしてください。
伝統的な琴譜は、縦書きになっており、リズムは厳格には記されていません。この文の中では、横書きにし数字譜も加えてあります。もし伝統的な琴譜を視奏しようとするなら、一定の演奏経験でリズムをとっていかなければなりません。そうとうな音楽修養があるか伝統的な琴譜になれていなければできないことです。経験豊富な古琴家でも、はるか昔の古譜をみる時、減字譜の辞典が必要になります。この種の辞典の刊行が待たれます。
古琴の演奏常識
どうやったら古琴を学ぶことができるでしょう?
一般には師について「口伝手授」によるのがふつうです。しかし古琴家には自習しているものもいます。ただ按弦・定弦・識拍・識譜やその他の技巧の伝統的なやくそくごとは、言葉で説明することができます。
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琴卓1張、椅子1を用意し、古琴の頭を右にして置き、
琴卓は低く椅子は高めにし、坐って演奏する時、両手が動きやすく肘と腕が水平になるようにします。
琴の平衡を確かめ、もし差支えがあれば砂袋
坐る位置は、4徽と5徽の間に正面を向いて対します。左手が徽の間を動きやすい位置に座ります。
身体と琴の間は拳2つほど(20センチぐらい)空けます。開きすぎても狭すぎてもよくありません。
頭と胸を真直ぐにし腰をおろしすわった姿勢から、左右の手の動きを全てコントロールできるようにします。
正確な徽のポジションをとるため眼は左手のみを見ます。右手は弦を触って確かめる習慣をつけ、右手を見ないようにします。
演奏中は頭や肩・身体などゆらしたり、唇を動かしてはいけません。(これは見た目に美しくありません)
音の強弱やテンポの緩急をきちんととるため、心を落着かせ呼吸を平静に保ちます。
両手の指のかたちは自然で美しく、悪いくせをつけないように。(各家の琴譜の手勢図を参考にします)
左右の手は、一つの指を動かす時、他の指は一般にゆるやかに伸ばし、いたずらに曲げてはいけません。
左手の名指(薬指)で弦を押さえる時、指の骨の先に力をいれ、指紋のある左側で押さえるようにします。
左手の中指で弦を押さえる時、第一関節に力をいれ、関節と弦との接点が正中になるようにします。
左手の食指(人差指)で弦を押さえる時、指紋の先、正中の位置で力をいれます。
左手の大指で弦を押さえる時、ある時は第一関節の右側で押さえ「肉按」、ある時は爪の右側、爪と肉が半ばするよう傾け押さえます「
左手の名指で5徽以上の弦を押さえる時「
右手の弾く位置は岳山と第1徽の間です。古代の鎖法で弾く時も、4徽を超えません。
調弦の仕方
一曲弾き終わるごとに、琴弦の音程を一度確かめます。先ず5弦7徽の泛音(a)をだし、泛音で以下のように調弦していきます。
この方法で調弦すると、7条の弦の関係は三分損益律になります。伝統的な琴曲を演奏する時は必ずこの律を用います。
こうしたやくそくごとを心得、はじめて指法や譜をもとに古琴の演奏を試すことができます。
初めて曲を弾く人のためには《関山月》《陽関三畳》《梅花三弄》の3つの古琴の曲を推薦します。
《関山月》は正調で弾く指法の練習に適した独奏曲です。《陽関三畳》は蕤賓調で弾くやさしい琴歌です。正調の《梅花三弄》は有名な琴簫合奏曲です。この3曲は、それぞれ古琴の3種類の演奏形式にあたり、調弦を換える練習にもなります。
この3曲ができるようになれば、古曲を発掘することもできるようになります。伝統的な古琴の曲は縦書きですので、最初リズムをとるのが難しければ、横書きに書き直し数字譜や五線譜を使ってリズムを表し減字譜と対照させてもよいです。
何か疑問があれば師に教えをこいましょう。 古琴の常識と演奏 完
(最初のページ)古琴の歴史
古琴の結構
琴弦の張り方
古琴と弦のもとめ方
古琴の音色
古琴の3種類の伝統的な演奏形式
古琴の13の徽
(前のページ)古琴の律と調
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古琴の技法と琴譜
古琴の演奏常識
古琴ことのは 2000.4.23訳