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 室町時代の絵画3 水墨画の展開 雪舟(西)と雪村(東)

雪舟以降の室町地方水墨画
江戸初期の評判“雪舟在西辺、雪村居東極”(狩野永納1678頃『本朝画史』卷二13)

鎌倉 関東水墨画
賢江祥啓 15C中-16C初
野州人 号は貧楽斎 鎌倉建長寺の書記役だったので啓書記と呼ばれる
始め建長寺の僧、仲安真康に画を師事?
1480年文明十二年まで三年間、京都にて芸阿弥に師事 幕府の画庫で唐絵を学ぶ
 参照:◎芸阿弥 観瀑図 紙本墨画淡彩 根津美術館 印信図 認可状の役目
鎌倉を中心とする関東画壇に大きな影響 啓孫など「啓」字の画家たちなど

◎山水図 51.2×30.6 紙本淡彩 根津美術館
  明解で堅固な空間をもつ楷体山水図 瀟湘八景中の山市晴嵐図?
 山水図 39.2×91.4 紙本水墨 ボストン美術館

式部輝忠 16C中(1525頃-1573頃)
逸伝の画家 大正以降再評価 屏風4双、掛軸20、扇面100点ほど
「式部」「輝忠」印(以前は「龍杏」と読まれていた)
祥啓から堅固な山水空間の構成を学ぶ
その他、人物、花鳥画を鎌倉画派の仲安真康、小田原狩野派から元信様式を学ぶ
煩瑣なタッチと描き込み、装飾的傾向 金の積極的な使用 
シュールレアリズムのような幻想空間

 富士八景図 建仁寺262世常庵龍崇(-1536)賛 静岡県立美術館
 李白観瀑図 景筠玄洪賛 根津美術館
◎四季山水図屏風 六曲一双 静嘉堂文庫美術館
 四季山水図屏風 六曲一双 153×324  サンフランシスコアジア美術館
◎巖樹遊猿図屏風 六曲一双 京都国立博物館
 韃靼人狩猟図屏風 六曲一双 出光美術館 近年アメリカから戻ったもの

雪村 周継(諱) 1504頃-1589頃
[生涯]
室町末期の画僧、生卒年不詳 号は中居斎、舟居斎、鶴船
1504年永正元年頃 常陸国 (茨城県) 太田の戦国武将佐竹氏の長子として生
家督を奪われて夢窓派の正宗寺に入り禅僧となって画の修業に励む
50代半ば以降関東、東北を遍歴
1546年天文15年会津の芦名盛氏、1550年天文19年小田原北条氏康、氏政などの戦国大名、早雲寺開山の以天宗清、同2世の大室宗碩、円覚寺第151世景初周随などの知遇を得
晩年 三春〈雪村庵〉 (田村隆顕、清顕が支配、郡山市西田町字雪村)に隠棲
86歳余で没
[作品]
山水、花鳥、道釈人物など多方面に約200点近く
雪舟、関東画壇、鎌倉宋元明画から影響 エキセントリックな形態感とムーブマン
“大抵新意を略出し,筆を用いる所は狂逸にして奇思がある”(『本朝画史』)
画論『説門弟資』1542年天文十一年は江戸時代の偽作? 雪村の根深い人気を表す
尾形光琳、佐竹永海など江戸絵画に広汎な影響
山水画:
 瀟湘八景図帖8図 福島県立博物館 30〜40歳頃初期作
 瀟湘八景図 永青文庫
 山水図(瀟湘八景図巻断簡) 群馬県立近代美術館
 瀟湘八景図巻 クリーヴランド美術館
 瀟湘八景図屏風 六曲一双 1585年天正十三年82歳頃 個人蔵
 楼閣山水図 バークコレクション 早期作
◎夏冬山水図 双幅 京都国立博物館 早期作 Z字型構成
 山水図 30.2×46.7cm バーク氏寄贈 メトロポリタン美術館 Z字型
 金山寺図屏風 六曲一隻 笠間稲荷美物館
 四季山水図屏風 六曲一双 シカゴ美術館 左隻 右隻 山水画の代表作
◎風濤図 野村美術館
 四季山水図屏風 六曲一双 九州国立博物館
 山水図屏風(右隻) メトロポリタン美術館
龍虎禽獸:
 龍虎図屏風 六曲一双 クリーヴランド美術館 龍図 虎図 龍虎図の代表作
 龍虎図屏風 六曲一双 根津美術館
◎松鷹図 双幅 東京国立博物館 
○鷹山水図屏風 六曲一双 東京国立博物館
 猿猴図対幅 各137.5cm×70.8cm 茨城県立歴史館 元三幅対(中幅に寿老人)
 百馬図帖13頁 ミホミュージアム 鹿島神宮 雪村奉納 各図3,2頭 全35頭
 馬図 ミホミュージアム
花鳥画:
 柳梅白鷺図屏風 六曲一双 ミネアポリス美術館 左隻 右隻 花鳥画の代表作
◎花鳥図(柳梅白鷺図)屏風 六曲一双 大和文華館
◎叭々鳥図 26×48cm 1555年天文二四年景初周随 ?-1557賛 雪村花鳥画基準作
  常盤山文庫→2018年文化庁8640万円で購入
 竹に五雀図 ミネアポリス美術館
 蔬菓図 福島県立博物館
 竹に鳩図 福島県立博物館
人物画:
 滝見観音図 正宗寺 初期作 弘願寺本滝見観音図を模したか
 釈迦羅漢像三幅対 各約126×57cm 茨城善慶寺 隠し落款 大徳寺五百羅漢系
◎呂洞賓図 大和文華館 人物画の代表作
琴高仙人・左右群仙図 京都国立博物館
◎竹林七賢図屏風 六曲一双 1574年天正二年72歳頃 畠山記念館
 蝦蟇鉄拐図屏風 六曲一双 東京国立博物館
 欠伸布袋・紅白梅図 茨城県立歴史館 光琳紅白梅図への影響説
◎雪村自画像 大和文華館
 題:山川一色白於綿,茅屋斜連籠淡煙。興盡不如棹回去,柴門流水月明前。
 現存する日本最古の自画像 東洋人の自己とは 参照:下欄の十牛図
 比較:西洋近代の自画像の伝統 フーケ、デューラー ……



参考書
赤沢英二 雪村周継 多年雪舟に学ぶといへども ミネルヴァ書房 2008年
小川知二編 もっと知りたい雪村 生涯と作品 東京美術 2007年
小川知二 常陸時代の雪村 中央公論美術出版 2004年
赤澤英二 雪村研究 中央公論美術出版 2003年
「雪村展-戦国時代のスーパーエキセントリック」展図録 山下裕二監修 2002年
山下裕二 室町絵画の残像 中央公論美術出版 2000年
「関東水墨画の200年」展図録 栃木県美、神奈川県立歴史博物館 1998年
中島純司 水墨画 祥啓と雪村 至文堂 日本の美術337 1994年
赤沢英二 新装版日本美術全集16 雪舟/雪村/元信 学習研究社 新装1999年
田中一松, 中村溪男 水墨美術大系7 雪舟・雪村 講談社 1973年
狩野山雪・永納 1678年序本朝画史、1819年続本朝画史 国会図書館蔵
 明治期 尚栄堂文永堂本
  1画原 2上古画録 3中世名品 4専門家族,雑伝 5画印
 明治刊本
  1総説、上古画録 2中世名品 3専門家族、雑伝 4皇朝名画拾遺 5皇朝名画拾遺

特別展「雪村−奇想の誕生−」
主要作品約100点と関連作品約30点で構成される過去最大規模の回顧展
「第1章 常陸時代 画僧として生きる」「第2章 小田原・鎌倉滞在 独創的表現の確立」「第3章 奥州滞在 雪村芸術の絶頂期」「第4章 身近なものへの眼差し」「第5章 三春時代 筆力衰えぬ晩年」「第6章 雪村を継ぐ者たち」
2017年3月28日(火)〜5月21日(日) 東京藝術大学大学美術館
2017年8月1日(火)〜9月3日(日) MIHO MUSEUM
特別展「雪村展-戦国時代のスーパーエキセントリック」
2002年1月-9月 千葉美術館、松濤美術館、山口美術館、福島県立美術館巡回
新規開館記念特別展「雪村 常陸からの出発」
1992年 茨城県立美術館
特別展「雪村」
1974年7月31日〜9月1日 東京国立博物館
雪村の作品と共にその画風を追った雪関、雪洞等の作品も同時に展示



伝 周文 十牛図 自分さがしの旅
十牛図 騎牛帰家 室町末 円相径14.0cm 紙本墨画淡彩 一巻 相国寺
(参照:◎絶海中津(1336-1405)書 十牛頌 相国寺)
十牛図は、絵解きの入った禅の入門書として、中国宋時代の禅宗のなかで牧牛図や十二牛図など多種流行したものの一つです。そのうち日本では、北宋末南宋初に湖南省常徳県の梁山に住した廓庵師遠(臨済宗楊岐派)がまとめた十牛図が、鎌倉時代以降広まりました。(ちなみに中国の明清時代や朝鮮では普明(臨済宗雲門派の蒋之奇?)の十牛図が流行しました。)
人間が生れながらにしてもっている仏性(本心)を牛に象徴し、「失った牛を尋ね求め、見つけ出し、つかまえて飼い馴らす」過程を十図に分け、それぞれの図に序と頌をつけ、悟り(真理)を得る修行の手引きとしたものです。
  1. 尋牛   失った牛を探す 本来の自己を探しに出る
  2. 見跡   牛の手がかりを見つける 知識として知ったにすぎない
  3. 見牛   牛の声を聞き後ろ姿を見る まだ全てを見たわけではない
  4. 得牛   ついに牛を見つけ手綱をつけるが、牛はいやがる
  5. 牧牛   牛をならし連れて帰る 牛の顔を見る
  6. 騎牛帰家 牛に乗り笛を吹きつつ家に帰る 牛と童子は一体
  7. 忘牛存人 家に帰り牛のことも忘れる 悟った気持ちさえも忘れる
  8. 人牛倶忘 一円相 人も牛も忘れた絶対空の世界
  9. 返本還源 人も牛も消え、花と水の自然に還る
  10. 入廛垂手 童子は布袋と対面、世間に還る
参考書:上田閑照、柳田聖山 十牛図 筑摩書房1982年(1992ちくま学芸文庫)
 シルヴァスタイン/倉橋由美子訳『ぼくを探しに』
 マ・サティヤム・サヴィタ『さがしてごらんきみの牛 詩画・十牛図』



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 日本美術史ノート 水墨画の展開 雪舟と雪村   2002.10写 

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