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    杭州・上海・南京古琴行1
    杭州・上海・南京古琴行2

 杭州・上海・南京古琴行2

11月 8-11日 上海音楽学院 上海博物館
8日に杭州から上海に移動し上海音楽学院に宿泊しました。
その晩の上海音楽学院の留学生演奏会に合わせたためです。日本人留学生の今井さんは打楽器を、湊さんは古箏を弾き元気でした。このメンバーに揚琴をならう山本さんも加わり先の杭州の古琴の会を聴きに来てくれていたのです。
9日は今虞琴社社長の戴樹紅宅を訪問、10日は上海音楽学院を退職された林友仁を訪れ、それ以外は上海博物館参観にあてました。(以下文中敬称略)

北宋 王[言先] 煙江疂嶂図巻 上海博物館蔵  

北宋 王诜 煙江疂嶂図巻 上海博物館蔵
写真は不鮮明ですが煙江疂嶂図巻の前半部、右下に小さく琴童を連れた2人の高士が歩みます。あたりの小高い樹木は霧に掻き消え、杖をつき細い体を前傾させた高士のさまは、まさに逍遥するといった言葉がぴったりです。

東漢 紅陶撫琴俑 上海博物館蔵  

東漢 紅陶撫琴俑 上海博物館蔵
漢時代の撫琴俑は、自ら弾じ唱う弾琴の活き活きとした様を伝えるものとして、四川省綿陽漢墓出土の男俑など比較的たくさん知られています。こんどの旅でもこの上海博物館の俑の他、南京博物院でも四川省彭山漢墓出土の撫琴俑2体を見ることができました。
琴歌というジャンルは、今とりあげる人は少ないですが、むしろ詩経の時代から漢時代にかけては琴歌が盛んであって、その後文人の独奏スタイルが主流になって以降も、宋の詞や明の江派など棄てがたいレパートリーをつくっています。日本の江戸時代、東皐琴譜があれほど普及したのも、音楽に加え言葉と肉声の訴求力をもつ琴歌だったからこそでしょう。
査阜成が古琴の3種類の伝統的な演奏形式として独奏と合奏と琴歌をあげたように、今また琴歌の復活をとなえたく思います。

林友仁宅にて 手前に林友仁  

林友仁宅にて お弟子さんたちと座る林友仁
林友仁は、杭州の会に参加されなかったため上海ではぜひ訪ねてみたかった琴家の一人です。10年以上前に伺った時と同じ愛用の明琴で、微妙に変化するいぶし銀のような音色の《流水》を聴かせてくれました。
なお林友仁宅と昨日の戴樹紅宅にも、2週間ほど前、香港在住の服山清一が久しぶりに訪れたとのこと。日本の古琴を弾かれる方が復活するのは嬉しいことです。 

11月11-15日 南京芸術学院 南京博物院
11日に上海から南京に移動し南京芸術学院に泊まりました。
上海から引きずって来た小雨まじりの天気が、南京でも続きます。
初め泊まった学院の招待所は、新しくできた★★級のホテルのような感じで悪くなかったのですが、成公亮のご好意もあり、一人娘の紅雨が今年9月からのドイツ留学でいなくなった学院内のご自宅に、北京に帰るまで家族同様のお世話になりました。
12日午前中は室内で休息。珍しい旧録音や最新のもの、また完成して以来初めて聴く《袍修羅蘭》(全曲の楽譜はここ)からの数曲を愛琴秋籟で弾いていただきました。来日された時、日本のわが宅で作曲されたばかりの第1曲《地》を弾かれるのを聴いてから、すでに4年がたちました。この間にそれぞれの身辺共に少なからぬ歳月の変化がありました。
午後は北京行きの切符の手配を終えてから、林友仁に紹介された少壮の仏教学者の呂建福宅を訪れました。呂建福は、呉門琴社に属し呉兆基の“静”“松”(軽やかで無駄な力のないさま)の風格をよく伝えています。
珍しく晴れた13日は一日鐘山観光、明の朱元璋の孝陵、民国の孫文の中山陵、霊谷寺など、南京は初めてですのでお決まりの名所をまわりました。午後遅くに帰ると、学院となりの古林公園で風箏(凧)あげに熱中している成老を見つけました。
14日は終日南京博物院、《江蘇歴代書画名家精品展》の展示の他に、珍宝室に展示されている南宋の閻次平の《四季牧牛図》が、図版で見ていたのよりはるかに精品であることがわかり眼福でした。南京最期の晩は、お弟子さんに来てもらって皆で夕食を共にしました。

呂建福宅にて  

呂建福宅にて 左から呂建福(南京市仏教協会)、Felix Wassermann(徳国)、韋海波(南京大学)、 益華(呂夫人 南京大学)
呂建福は《漁歌》《鴎鷺忘機》《石上流泉》、韋海波は梅庵派の《平沙落雁》、呂夫人は《憶故人》などを弾かれる。特に夫妻は小鳥の愛好家で、部屋を小鳥がとびかいます。琴と鶴というように、ほんとうは鶴を飼いたいが部屋が狭いので小鳥にしているといいます。愛鳥を肩にとまらせて弾く呂建福は、小鳥の琴人といえ飄々としてユニークです。

南朝磚画 古琴を弾く榮咸期  

南朝 磚画 竹林七賢と榮咸期 南京西善橋出土 南京博物院蔵
有名な磚画が、ま上からの照明によってくっきりと浮かび上がっています。

成公亮宅にて  

成公亮宅にて 左から郭平(南京師範大学)、橘田勲、劉雅[女那](南京三江学院)、成公亮、成公亮の妹
成公亮は《袍修羅蘭》からの《見》、橘田勲は《平沙落雁》、荒井雄三は《漢宮秋》、郭平は《瀟湘水雲》、小劉は《陽関三畳》、妹々は《良宵引》を弾かれる。後はお茶を飲み家族同様の雑談に時をすごしました。郭平からは出たばかりの自著『魏晋風度与音楽』(安徽文芸出版社)という興味深い六朝音楽美学論が皆にくばられました。

15日出発の日は、雨のなか成老の案内で、鶏鳴寺と近くの東南大学の校内北角、六朝柏の近くにある民国の梅庵派活動の故居に立寄りました。
夜8時発の快速列車硬臥で北京へ、ほとんど休みなしのあっというまの旅程でした。
一眠りした翌朝の窓外には、うっすらと雪がつもった初冬のきびしい北の世界が開いていました。






























 background image:西湖に泳ぐ魚 
           於花港観魚(西湖十景之一) 


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  中国古琴行    2000.11.21写 

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