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人々がもの憂げにつどうコローの風景画のよう 岩山寺の夕暮れ |
分かれ道のある砂河から五台山の方向へ道をとってしばらくして、伊運転手が道を聞き始めました。どうも道が違うようです。
今まで快晴だったのが、この頃から雲行きがわるくなり始め、西の空の灰色の雲からは細く黒い雨あしが糸を引くように落ちているのがみえます。
何人かに聴いた結果、先ほど砂河の分岐点を西にいくと天岩村があり、そこに「壁画の寺」があるとのこと。直ちに引き返し、分岐点から公道を西にむかい五分ほどで右にまがり、何の目印もない農道のようなでこぼこの一すじの道を遠くの山に向って進み始めました。
これからが悪路でした。農民や子供が暇そうに腰かけているあまり豊かではなさそうな土壁の小さな村をすぎました。ここではありません。
さっき見えた雲の下に入ったのでしょう、どろの雨はおちてくるは、道はますます狭くでこぼこになるは。道の中央に出水の走ったあとのような深いえぐれが続き、車がはまりこまないよう慎重に進みます。
また貧しそうな村をすぎましたが、ここでもありません。
途中、一人の僧を追いこしました。皆これは岩山寺の僧に違いないと喜びましたが、聞くとただの托鉢の僧で岩山寺のことは知らないそうです。しかし僧に出会ったことで、何かにおいがしてきたように思います。雨も止んできています。
でこぼこ道は、山のふもとまで一直線に続きそこに寺があるように見えます。しばらく行くと道が右に折れはじめ視界が崖でさえぎられます。別れ道を右に進みやがてふもとの村、天岩村につきあたりました。むかって右端に紅く古びた寺の壁がありました。
これが岩山寺、時刻は3時半をまわっています。ここまでくるのに、でこぼこ道を4, 50分もかかったでしょうか。
さっそく車を止め、寺の門を叩きましたが、門は閉ざされたまま静まりかえっています。
ここまで来て運がなかったか、その場所に来れただけでも吉とするか、などと思いめぐらしながら、さらに叩いたり呼んだりしていると、木の扉が開き、眼がつぶれ歯が欠けた門番のような人が顔をだし、入ってよいといいます。
内は小さな建物がいくつか、雑然と散らかった中庭に、馬小屋のように扉をはずされ内部が見えてしまっている文殊殿がありました。今は数人の職人たちが建物の外部を工事している最中です。
開け放たれた建物の内部に入ると、中央の本尊などの塑像群は全てシートに覆われ見ることができませんが、壁画は間近に見ることができます。
壁はいちおう補修が終わっているようにみえ、南壁の西側部分の大半などすっかり塗り込められていました。壁画の遺る所も穴を新しく埋めたような跡があります。壁画はひどい痛みのため全体に白く膜がかかったように見えます。
この工事の監督官のような人民服の小さなおじいさんが入ってきて何か話しかけますが、なまりがひどく聞き取れません。さらに熱心に見ているとまた入ってきて李のような黄色い実を何個かくれました。
やがて今日の仕事を終えた眼のぎょろっとした職人たちも何人か来たりしました。山に近い場所は日暮れも近いのでしょうか、職人たちと一緒に寺の外に出され、門は再び閉ざされました。
先ほどの監督官のおじいさんの話では、今年の10月頃から公開されるだろうとのこと。国の重点文物の工事中のこと、普通は見れないはずのところ、間近に近寄って見ることを許してくれたおじいさんに感謝しなければなりません。
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白いフォルクスワーゲン 岩山寺 |
東面壁画 鬼子母変相 |
![]() 東壁の壁画は、高さ3.45m、長さ11mの画面に、經変の故事と人情風俗のさまを描きます。楼閣や樹木、山石に雲はめぐり、寺や店鋪、車馬や人物など精緻です。遠くの宮殿の中には国王・太子・宮女などさまざまな様子をしています。宋・金時代の都市風俗を描いた一幅の歴史絵卷です。 |
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摩坊 |
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![]() (クリックすると大きな画像が開きます) |
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![]() (クリックすると大きな画像が開きます) |
![]() (クリックすると、模糊としていますが大きな画像が開きます) “村酒透瓶香”と書かれた幟のある酒楼のすぐ上には、商人のようす、盲人が占いをし、子供が玩び、酒客が听き唱うさまなどが続きます。『清明上河図巻』に比べられる場面。 |
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五台山の遠望 はるかふもとにいま訪れた岩山寺がある |
7月14日(金) 北京 大同
15日(土) 大同 雲崗石窟
16日(日) 大同 華厳寺 懸空寺 木塔 岩山寺 ★NEXT→五台山
17日(月) 五台山台内の諸寺
18日(火) 五台山台外の諸寺
19日(水) 五台山 太原
20日(木) 太原 休息
21日(金) 太原 山西省博物館
22日(土) 太原 平遥
23日(日) 平遥 太原
24日(月) 太原 天龍山石窟
25日(火) 太原 北京