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 清 龔[龍/共]賢 山水画の描き方 《課徒画稿》

    課徒画稿 画樹 樹を描く
    課徒画稿 画葉 葉を描く
    課徒画稿 画石 石を描く
    課徒画稿 (別稿)

画樹 樹を描く

起手式 始めかた

山水画を描くには、先ず樹(き)の描き方から始めます。樹は幹(みき)から描いていきます。

  畫山水先学畫樹,畫樹先畫樹身。
  第一筆 第一筆 第一筆目は上から下へ描きます。最初は鋭く入り下で止めます。中ほどは適当に筆を止めつないでいきます。止めて曲る所は極端な角がたたないよう。一筆目で幹の左側を描きます。
一筆目から筆法(用筆)に注意します。用筆は「遒」「勁」であること。「遒」は、線が柔軟でかつ弱くないこと。「勁」は、線が強くかつ脆(もろ)くないこと。弱くては線が草々として薄く、脆いと線が柴の枝のように死んでしまいます。

  第一筆,自上而下,上鋭下立,中宜頓挫。頓挫者折處無稜角也。一筆是畫樹身左邉,第一筆即講筆法。筆法要遒勁。遒者柔而不弱,勁者剛而不脆。弱則草,脆則柴,草則薄,柴則枯矣。
第二筆 第二筆 第二筆 第二筆を第一筆の上に描いた後、転じて上へ描き第三筆とします。

  二筆轉上即為三筆。
第三筆 第三筆 第三筆 第三筆を描いた後、小枝を手の動きのままに入れます。小枝は数えません。

  三筆之後,随手添小技。添小技不在數内。
第四筆 第四筆 第四筆は樹の幹の右側にあたります。幹の中に点を入れ節とします。下にも点を入れ根とします。枝を添え描いていくのに決まった法はありません。枯れて枝だけになった樹を参考にするとよいでしょう。

  第四筆,是畫樹身右辺。樹身内上點為節。下點為樹根。添枝無一定法,要對枯樹稿子臨便得。
全樹 全樹 樹の全体(左向きの樹)を描き終えました。枝は対(つい)にしないよう。対に生えるのは梧桐です。

  全樹(此向左樹)。樹枝不宜對生,對生是梧桐矣。
一般に樹は直立していません。左に向いていなければ、右に傾いています。左向きの樹の枝は、左が長く右を短くします。右向きの樹の枝は、その逆です。

  大約樹無直立,不向左即向右,直立者是変體。向左樹枝左長右短,向右樹右長左短。向左樹為順手,向右樹為逆手。

向右樹式 右向きの樹の描きかた
左向きの樹は、先に幹を描いた後、枝を描きます。右向きの樹は、枝の後に幹を描きます。

  向左樹先身後枝,向右樹先枝後身。
  第一筆 第一筆 第一筆 右向きの樹は、第一筆を描いた後、左に転じます。第一筆はこんな感じで描きます。
小枝を手の動きのままに入れますが、ここでは数えません。

  向右樹,一筆從左轉上。一筆起手若此。
  随手添小枝不算。
第二筆 第二筆 第二筆で樹の幹の右側を描きます。小枝を入れますが数えません。

  二筆畫樹身右邉。添小技不算。
第三筆 第三筆 第三筆で樹の幹の左側を描きます。小枝を入れますが数えません。こうして1本の樹ができあがりました。

  三筆畫樹身左邉,添小技不算。即成全樹。
一叢 一叢 右向きの樹を描いた後、第二の樹、第三の樹を描きたします。三本の樹のセットで一つの林を作ります。これを「一叢」といいます。

  向右第一樹。第二樹。第三樹。三樹為一林,又謂之一叢。

一本の樹を描くのには、一本の樹をイメージすることが必要です。今、樹を合わせて一つの「叢」(林、繁み)として描いた中に、樹のように見えないものがあれば、それは画の理が明解でないためです。

  畫一樹要像一樹,今畫合看亦是一叢,分而観之其中有不像樹者,由於畫理不明也。

叢 山には決まった見方がありませんが、樹を描くには、樹を人のように見るとよいです。直立しているものもあれば、偏っているもの、俯いたり仰いだりしているもの、振り返っているもの、伏しているものなど。大きな枝は腕のように、樹の頂きは頭、根は足のように。何か理にあわないことがあれば、何か欠けている人のようになります。
樹を描くことは、描く過程(居渚は“日居月渚”、歳月の意)全体の半ばにあたるほど大切です。詩を見るのにまず二律を見るように、山水画を見る場合まず樹を見るのです。

  山無一定之款式。畫樹如人,有直立、有偏倚、有俯仰、有顧[目分]、有伏臥。大枝如[辟/月]、頂如頭、根如足,稍不合理如不全之人也。畫樹之功,居渚事之半,人看畫先看樹,如看詩者先看二律也。

向左樹式 叢 左向きの樹のある林の描きかた

一つの林の中にも主従があります。先ず一本の樹を描き主とし、二本目以降は従になります。
左向きの樹には前に向く樹がいります。右向きの樹もこれにならいます。左向きの樹は、左が前、右が後です。右向きの樹はこの逆です。
根が画面の下にある林は主になり、根が上にある林は従になります。根が下にあるものは、従になる林より高くありません。
主樹はあまり小さすぎても、大きすぎてもいけません。大小の変化に妙があり、根や梢を同じ大きさや高さにしないように。

  一叢之内有主有賓,先畫一株為主,二株以後倶為客矣。
  向左樹必要另[口/力]一樹向前,右亦倣此。向左樹以左為前,右為後。向右返是。
  根在下者為主叢,根在上者為客叢。根在下者頭不得高於客叢。
  主樹不得太小,亦不可太大。大大小小方妙。根梢倶不要相同。

向右林   叢   向左林

一つの「叢」の中にも表裏があります。第一株が左を向いていれば、第二株は左を向かないようにします。二株が異なった向きをもつものを「分向」といいます。第三株は第一株と同じ向きです。第三株の頭が第一株と同じ向きで、枝が異なった向きをもつものを「調停」といいます。
一樹の梢や枝が真直ぐ上に伸び、側の樹の枝がそろって二つに分かれているのものを「破式」といいます。
林一つのものを「単叢」、二つのものを「双叢」といいます。二つの林が相対して同じにようにしないように、株の多い少ないの変化をもたせます。

  一叢之内有向有背。第一株向左,二株不得又向左。二株両向謂之分向。三株即同一株之向。三株頭與一株同向,枝或両向謂之調停。
  一樹枝梢直上,傍樹枝即宜両分,謂之破式。
  或止畫一叢謂之単叢。或畫二叢謂之雙叢。二叢或二或三或四或五。不可二叢相對一様。二叢不妨或太多或太少。

春林
枝が、枯れて脆くなっているものを「寒林」、やわらかく潤ってつややかなものを「春林」といいます。
稍に少し点をつけて新緑とします。新緑の点は一色です。いろいろな点を描き分け疏林とします。
枝の上に空白を残し、淡墨で枝の外を染め雪樹とします。
先に枝を好く描き点を加えます。一枝には一枝の勢があります。もし枝の内に点葉が草のようについているものがあれば、これを勢がないといいます。
樹はあまり真直ぐすぎず、曲がりすぎないように。真直ぐなものは平板になり、曲がりすぎのものは俗になります。
直立する樹の幹は高く痩せています。傾いでいる樹の幹は太っていることもあります。
柳を描くには、先ず二つの向きをもつ枯樹を描き、長い條を加え、下に垂れる枝を添えます。垂れる枝を2本の輪廓で描くのはまずいです。

  枝枯脆者為寒林。技柔弱而潤沢者為春林。稍差點者為新緑,新緑一色點。分各様點者為疏林。枝上留白而用淡墨染其枝外為雪樹。必先畫枝好而加點者,一枝有一枝之勢。若云枝在内,而點葉在枝可[潦]草,謂之不得勢。
  樹身不宜太直,直則板。不宜太曲,太曲則俗矣。
  樹直立者身宜痩宜高。欹斜者不妨,身闊。
  畫柳宜先両成枯樹,然後加長條,添下垂枝方是柳。不宜早勾下垂條。


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