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 中国絵画史ノート 筆墨紙硯について

中国絵画の特質については、最初に中国絵画オリエンテーションを参照
筆墨紙硯は、各論のA、材料にあたります
中国では、この4者は文房四宝として特に大切にされてきました

筆                             
[歴史]
 篆書から隷書へ(無機的な線から有機的な線へ、毛筆の改良と関わる)
戦国 兔毫とごう 兔の毛)を束ね軸先に挿入し糸でくくったもの 筆套(さや)
   B.C.400頃 筆套付き毛筆 河南省信陽県長台関1956年出土 現存最古
   B.C.300頃 長沙筆 湖南省長沙市左家公山墓1954年出土 筆套付き
秦  「筆」という漢字に統一 蒙恬(もうてん)が兔毫筆を作る
後漢 李尤(りゆう)『筆銘』
西晋302年長沙墓出土対書俑 
文官が筆を持ち簡牘に書く姿 三国魏“韋誕法”による筆(兼亳筆?)
    韋誕(いたん)、書家、制筆『筆方』制墨を善くす
東晋 王羲之『筆経』兔毫筆の製法 
   『蘭亭序』鼠鬚筆(そしゅひつ 栗鼠?)長鋒による草書
唐前 巻筆(芯毛を紙で巻く) 正倉院の雀頭筆
  (短鋒、写経などの小楷書に用いる)
 後 顔真卿の書、水墨画の発生 柳公権の長鋒
宋  水筆(穂を糊で固める) 宣州諸葛高の散卓筆(筆全体に墨を含む長鋒?)
元  湖州(浙江省呉興)の羊毫蘭蕊 馮応科の筆 “徽墨湖筆”
明  飾り筆(筆管に磁器、彫漆、象牙、玉など)の流行
清  北京:賀蓮青、上海:陶正元、徐葆三 杭州:邵芝巌の羊毫筆
   梁同書『筆史』
[種類]
太さ(径):大中小(1号軸径15mm〜6号など)
鋒からの長さ(丈):長鋒(軸径に対して5倍以上)>中鋒>短鋒(3倍以下)
鋒の材料:
 動物:山羊(羊毫)、兔(紫毫)、鼬(狼亳)、猪、狸(狢むじな)、狐、貂てん、馬
    鹿(日本の山馬筆は亜熱帯の山岳地帯にいる水鹿(山馬)の毛
      中国の山馬筆は馬と狢あるいは猪の混毛)、猫(玉筆、かな用)
  ┌狼亳:鼬などの毛、かたい
  ├兼亳:硬軟まぜたもの
  └羊亳:山羊の毛、柔らかい 細光鋒(紹興上虞の雄山羊の顎下の毛)
 鳥 :鶏、孔雀
 植物:、柳、かずら、藁、草
 人間:胎毛
 人工:化学繊維
形:柳葉筆(紡錘形)、提斗筆(管頭が太い大筆)、雀頭筆(蕪形)
 特殊形 刷毛筆、禿筆、平筆、束筆など

墨                             
[歴史]
殷  甲骨文に墨書きしたものもある
   (参照:安陽殷墟出土墨丸?、陶片「」)
戦国 墨丸、石硯、研石の3点セット 雲夢睡虎地秦墓(湖北省)出土など
漢  戦国と同じく漆煙成分の多い墨丸と石硯、研石
   「尚書の令、僕、丞、郎に,
   月に渝糜(隃縻)の大墨一枚、小墨一枚を賜う」(応劭『漢官儀』)
   隃縻:陝西省千陽県東の地名、日本のスミの古音か
六朝 固形墨と石硯の2点セットへ
唐  正倉院墨
五代 南唐中主 李廷珪墨
宋  松煙墨から油煙墨へ 晁貫之『墨経』松煙墨の製法
明  油煙墨の流行 沈継孫『墨法集要』油煙墨の製法
   製墨家 嘉靖:羅小華、汪中山
       万歴:方于魯1589序方氏墨譜』、程君房1605序程氏墨苑
清  曹素功、胡開文、汪近聖
   安徽省歙県の製墨 曹素功製「鉄斎翁書画宝墨」油煙一〇一(五石漆煙)
[種類]
松煙墨 松の煤     青墨(粒子が粗い) 今は良いものが少ない
油煙墨 菜種油などの煤 茶墨(粒子が細かい)
墨汁  人工カーボン  粒子が細かく均一 改良が進む
┌中国 叩いて作る 膠弱い 墨の発色  硬水(にじみにくい)
└日本 練って作る 膠強い 膠のつや  軟水(にじみやすい)

紙                             
[歴史]
竹簡、木牘の時代
前漢 天水紙 2.6×5.6cm 甘粛省天水県前漢初期墓1986年出土
     材料不明(麻紙?) 地図が描かれている 参考:扶風紙
後漢 蔡侯紙 蔡倫が樹皮、麻、弊布ボロ、魚網から紙を作る(製紙法の確立)
竹簡、木牘から紙へ(王羲之の自在な書):
東晋 王羲之『蘭亭序』を蚕繭紙に書す
唐  樹皮紙麻紙(→日本和紙の伝統製法へ)、竹紙
五代 南唐中主の澄心堂紙(最高品質の加工紙)
宋  料紙(装飾した加工紙→日本平安の料紙へ) 倣古紙 竹紙の流行
元  文人画の台頭 半加工の生紙を好んで使用
明  箋紙(料紙)の流行 宣紙(安徽省)の台頭
清  宣紙の流行
[種類]
材料:麻、楮、三椏、雁皮(麻紙、楮紙、三椏紙、雁皮紙) →日本の和紙へ
   竹(竹紙 今の毛辺紙、白連もその一種)
   檀皮(青檀樹の皮、青皮 宣紙の原料)
厚さ:薄<厚「貢品<札花<棉連<単<重、偽夾」
   「単<二層(双、夾)<三層」(層、あい剥ぎが可能)
大きさ:全紙 四尺70×138cm、五尺84×153cm、六尺97×180cm
       半切35×135cm 尺八屏53×233cm など(数字は概数)
加工:┌熟紙   加工紙 にじみにくい 参照:洋紙のサイジング
   ├半生半熟紙
   └生紙   紙漉き後、乾燥したままのもの にじみやすい
宣紙 Xuan paper](日本では「画仙紙」、「本画仙」)
定義:採用産自涇県境内及周辺地区的青檀皮(pteroceltis talavinowii Maxim)和沙田稻草,在利用涇県独有的山泉水,按照伝統工芸経過特殊的伝統工芸配方,在厳密的技術監控下,在安徽省涇県内以伝統工芸生産的具有潤墨和耐久等独特性能,供書画、裱拓、水印等用途的高級芸術用紙。(中国 国家標準
産地:明 安徽省涇県北赤灘、曹溪(現在は西小嶺に)
原料:青檀樹皮+稲藁 →混合比により「棉料浄皮(檀皮多、じょうぶ)<特浄皮」
青檀は楡科、陝南の構(楮)に似る 冬季伐採、根を残せば3年後に伐採可)
加工:民国以前 日光漂白 長期変色しない
   現在 薬品漂白粉→たやすく変色  …宣紙製造法(下記陳・稲葉論文参照)
┌中国 宣紙 きめ細かい 
└日本 和紙 繊維が粗く不揃い

硯                             
[歴史]
戦国 石硯、墨丸、研石のセット 雲夢睡虎地秦墓出土など
前漢  方硯の例:漆盒石硯 山東省臨沂市金雀山出土
後漢 李尤『硯銘』
六朝 瓦硯、陶硯の流行 風字硯、円面硯、三足硯などの形
唐  磁硯:辟雍硯(21獣足円硯) 例:白磁硯
      澄泥硯の流行
   石硯:端溪硯(広東省肇慶)、歙州硯(江西省)の採掘始まる
宋  石硯の流行 米芾『硯史』 端溪下巖旧坑の採掘
   洮河硯の盛行 例:洮河石彫蘭亭集会図硯
明  万歴年間端溪水巖大西洞の採掘
清  蘇州呉派顧二娘などの作硯家
[種類]
材料:唐硯 和硯
 陶硯、澄泥硯、端溪硯、歙州硯、洮河緑石硯、松花江緑石硯、紅糸石硯など
形:板硯、瓦硯、箕形硯、風字硯、円硯、三足硯
 (宋代:円硯から方硯へ)太史硯、挿(抄)手硯、井字硯、蘭亭硯
 (明代以降)神斧、金鐘、古鼎、古琴、鵞硯、猫硯、蝉形、瓜果、竹節、天然形など様々な変形硯
中国四大名硯:
[端硯]
広東省高要県肇慶府の東、北嶺から西江沿い斧柯山一帯で産する
1.山坑北嶺系:西江の北西20キロ、北嶺で採掘 「端石硯」
宋坑 猪肝色、馬肝色、重く深みのある紫 枯淡の美 宋代より採掘 太史硯に多い 江戸では「紫石」と呼ばれた
梅花坑 石眼が多い 硯材としては下級
緑石坑 緑端(端溪緑石)を産出 蘭亭硯に多い 現代物は冴えない
2.山坑峡南系:西江の南、斧柯山一帯で採掘 「端溪硯」
坑仔巖 青紫に紅を帯びる 老坑に次ぐ良材
麻子坑 端溪第二の有名坑 良材が出る
3.水坑:峡南つまり西江の南、斧柯山下で採掘 明治以降日本に入る
老坑水巖」 藍紫色 大西洞など最高級硯材 華麗な美 明末清時代で大半、1970年代でほぼ採り尽して閉鎖 「端溪硯」
石紋:主として老坑 下記の他に金・銀線、天青、黄龍紋など
冰紋 青花 蕉葉白 魚脳凍 火捺
端溪冰紋 端溪青花 端溪蕉葉白 端溪魚脳凍 端溪火捺
石眼:赤鉄鉱、黄鉄鉱などの粒子による 一説に石蓮虫の化石
[歙州硯]
江西省婺源から安徽省歙県龍尾山一帯で産する
龍尾系の蒼黒 金暈
[洮河緑石硯]
甘粛省臨洮県洮河で産したが宋代で途絶える 台北故宮のものが基準
緑端(端溪緑石)を洮河硯と誤っているものが多い
[澄泥硯]
焼成硯の一種、清代で途絶えたため製法不明 江蘇省
現在の澄泥硯は蠖村石(わくそんせき)、霊巖石を材としており焼成ではない
硯の美:形、年代、硯材、石声による鑑賞


参考書
[概説]
筆墨硯紙事典 天来書院編 2009年 初心者向け
西林昭一、玉村霽山 文房具 ヴィジュアル書芸術全集10 雄山閣出版 1993年
長尾雨山 中国書画話 筑摩書房 筑摩叢書27 1965年
中田勇次郎 文房清玩1-5 二玄社(後、中田勇次郎全集に所収) 1961年
[筆]
梁同書1723-1815 筆史 高木壽穎による明治の再版、楊守敬序
木村陽山 筆 大学堂書店 1975年
小林勧掌 文房私宝 筆 高千穂書房 1997年
公森仁、杜暁帆訳 三清書屋・筆 中華書局 2005年
[墨]
宇野雪村 古墨の知識と鑑賞 二玄社 1989年
松井元泰 古梅園墨譜 古梅園15世松井淳次発行 1712年刊を1978年復刻
古墨 徳川美術館蔵 徳川黎明会徳川美術館篇 しこうしゃ図書販売 1991年
周紹良 蓄墨小言上・下 北京燕山出版社 1998年
周紹良 清墨談叢 紫禁城出版社 2000年
周紹良 曹素功制墨世家 北京古籍出版社 2003年
呉昌綬 十六家墨説 中国書店
陶湘 渉園墨萃 中国書店 1929年の復刻
明 方于魯編、呉有祥整理 方氏墨譜 山東画報出版社 2004年
明 程大約編 程氏墨苑4冊(首都図書館最善本23巻) 黄山書社 2009年
文房四宝・筆墨 故宮博物院蔵文物珍品大系 張淑芬、楊玲 2005年
葉恭綽、張絅伯、張子高、尹潤生 四家蔵墨図録 上海書店出版社 2006年
趙正範 清墨鑑賞図譜 上海書店出版社 2006年
[紙]
潘吉星 中国製紙技術史 佐藤武敏訳 平凡社 1980年
蒋玄怡 中国絵画材料史 上海書画出版社 1986年
陳剛・稲葉政満 中国伝統書画紙の製造現状に関する調査報告
 東京芸術大学美術学部紀要41号 2004年
[硯]
参考書:
相浦紫瑞 端渓硯鑑定法 木耳社 1976年 墨池の彫琢から宋明清の時代鑑別
呉蘭修、石川舜台訳 訳補端渓硯史 二玄社 1979年
北畠雙耳・五鼎 観硯録 講談社 1984年 参考意見として
井上研山編、中谷裕亮訳 端渓硯譜七種 二玄社 1990年
呉蘭修 端渓硯史 中国書店 1992年 道光本の復刻
馬丕緒 硯林脞録 中国書店 民國廿五年天津文嵐簃印書局刊を1992年復刻
端渓硯考集成 広陵古籍刻印社選編 江蘇古籍出版社 1999年
紀ホ 閲薇草堂硯譜 湖北美術出版 2002年 清・紀暁嵐の硯譜
図録:
古名硯1-5 二玄社 1974-6年 日本所蔵古硯の精髄
 1,2端溪硯 3洮河緑石硯 4歙州硯 5澄泥硯、諸硯
中国の名硯 五島美術館 1977年
北畠雙耳・釣石編 四君子庵硯譜 大胡九華 1974年
鳥羽石隠 和漢硯譜 三冊 寛政九年1797 立命大学図書館本
湯川玄洋 精華硯譜 二冊 博文堂 大正七年
井上恒一 百友硯譜二巻、晩翠軒 大正十一年
谷上隆介 宝硯斎硯譜三巻、大正十二-十四年
古名硯 国立博物館 昭和二六年
毎日展研譜 毎日新聞社 昭和四四年
蘭千山館名硯目録 国立故宮博物院編輯委員会 国立故宮博物院 1987年
紫石凝英:歴代端硯藝術 香港中文大學文物館 1991年 廣​東​省​博​物​館蔵硯
西清硯譜古硯特展 国立故宮博物院編輯委員会 国立故宮博物院 1997年
 1978年編纂『西清硯譜』収録240点から95点
楠文夫 硯台(イエンタイ)―中国の硯 美術出版社 1998年
文房四宝・硯紙 故宮博物院蔵文物珍品大系 張淑芬 2005年
中華古硯譜 北京工芸美術出版社 2005年 天津博物館蔵硯のカラー図版
天津市芸術博物館蔵硯 文物出版社 1979年 中国国内蔵古硯の優品

参考サイト
[墨]
墨雲堂 奈良墨の老舗
呉竹精昇堂 奈良墨の老舗
墨と硯と紙と筆 徽州曹素功芸粟斎のブログ
[紙]
紅星牌宣紙 中国安徽省の宣紙の大手メーカー
汪六吉 安徽省県晏公鎮にある宣紙のメーカー
汪同和 安徽省県川鎮にある宣紙のメーカー
小津和紙博物舗 日本橋にある和紙の老舗、和紙の史料館がある
はいばら 日本橋にある和紙の老舗、榛原の雁皮紙
紙の博物館 王子にある紙の博物館のサイト
和紙のわがみ堂 文京区白山にある店、和紙の詳しい紹介
[筆硯]
台北故宮博物院の硯展 2001年《西清硯譜》古硯特展 2004年松花石硯展
 珍玩の項 明 端石雲龍九九硯
北京故宮博物院蔵品検索  「文房用品」を検索 硯83面余
天津博物館の蔵硯4面 文房用具 
北京・首都博物館の蔵硯53面 文玩 
広東省博物館の硯展 2010年紫石凝英―端硯芸術展覧 2012年現代端硯精品展
毛筆的前世今生 中国の筆の成立ちの図解
みなせ筆本舗 兵庫有馬筆のメーカー、中国と日本の筆の違いについて
 端渓 端溪硯の歴史・現状など
中国の名硯 楠文夫硯の資料室の案内
古硯鑑賞 華夏名硯網より以下の書籍の図版
『古名硯』『天津市藝術博物館藏硯』『西清硯譜』『硯台』『東京精華硯譜』
画材店
古梅園 奈良県奈良市椿井町7 奈良墨の老舗、建物は国の登録文化財
鳩居堂 中央区銀座5-7-4 京都の老舗
喜屋  文京区湯島3-44-8 張大千愛用の画材
玉川堂 千代田区神田神保町3-3 張大千愛用の筆
得応軒 千代田区神田淡路町2-1 谷中店:谷中1-1-22 日本画材の老舗
清雅堂 千代田区神田須田町1-14 書道用具店
三多軒 千代田区西神田2-2-3 書道用具店
栄豊斎 千代田区神田小川1-10 中国ものを多く扱う書道用具店
宝研堂 台東区寿4-1-11 硯を中心とした書道用具の老舗
冨美堂 千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館地下一階 良質な硯の専門店
翠祥堂 渋谷区恵比寿西2-8-4 かな書用料紙の専門店
紙舗直 文京区白山4-37-28 坂本直昭の和紙の店、和紙自体が作品
PIGMENT 品川区東品川2-5−5 隈研吾デザインの伝統画材ラボ 寺田倉庫運営
キョー和 本店:新宿区百人町2-21-23 中国書道用品ディスカウントの店
海外:
博印堂 上海市福州路280 良質な筆 店主の趙正範は墨の権威
恵風堂 麗水店:台北市和平東路一段123號 書道具
    宣紙圖書部:台北市和平東路一段121號B1 麗水店地下 紙、書籍
勝大荘 台北市忠孝西路一段25、27號(大荘筆墨中心 重慶南路1段133号)




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 中国絵画の材料 筆墨紙硯について   2002.10.2作成 

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