段 | 小標題 | 解説 | 演奏時間 | download MP3 | |
一 | 凌雲渡江 | 泛音 | ゆったりとした泛音の序奏部分。冒頭に雁の群れが連なって飛ぶのをイメージした雁行の主題 6-6-1-1-211- | 66112-1-1--- |、 経過句に6--53という雁落の主題。 想いは虚空に高く雲を凌ぎ北の江を渡る。 |
1分26秒 | 253k |
二 | 知時賓秋 | 少しテンポを速め再び雁行の主題が、散音で始まる。秋が来、これからの長い旅を想い胸がさわぐ。旅立へと思いは突き動かされる。 | 40秒 | 117k | |
三 | 月明依渚 | 月明りに映る渚を見つけ、今日の一日の宿りとする。 段末に撥剌(はつらつ)の手法で、砂州に舞い降りる主題。 66.-66 | 666-6--- | |
40秒 | 116k | |
四 | 呼群相聚 | 群れを呼びあい集う。冒頭に低く呼群の主題。 6--3-63- | 636-3--- | 中間に秋のエレジー。 3-6--6-53-3-3- | 6-11---6-53- | 5-61-----6-----53-3-6-6--- | … そして次の平沙の主題に導かれて 1-----2-321----6 | 5---6-1-6--6---- | 段末に結びの雁の句。 5--3-5-3 | 5-61-22--- | 2-2--1-6 | 6--- |
55秒 | 161k | |
五 | 呼蘆而宿 | 泛音 | 原注:悲聲叫得蘆花白 蘆の間に宿る。悲しい鳴き声はこの世の全ての蘆の花をもまっ白に凍てつかしてしまう。 後半の経過句に第1段の雁落の主題。この主題は以下、泛音の段などに頻出する。 7--65765 |
23秒 | 68k |
六 | 知時悲秋 | 悲しい秋がやってきた。 少しテンポを速め、冒頭に第4段の秋のエレジーが展開する。 3-6--6-53-3- | 5-1-2--1-6 | 6-6-3-66---- | 飛吟が活躍し、段末に再び結びの雁の句が4度上に現れる。 1--6-1-6 | 1-23-3-6--5--6飛吟5-3 | 3-3-6-33--- | |
31秒 | 92k | |
七 | 平沙晩聚 | 冒頭に第4段の平沙の主題。 1---2-3-2---1-6- | 5-6-6---- | 撥剌に長鎖(3-33333333--)、また如一に大撮を続け、暮方の平沙に舞い降りた群れが、しばし鳴き交う。 |
23秒 | 69k | |
八 | 南思洞庭水 | 泛音 | 目ざすは遥か南の地、洞庭湖の水を思う。 冒頭に飛雁の主題(3度上行型)。この主題は以下、頻出する。 335-5--- | 335-5--- | 経過句に雁落の主題。 1--65165 |
22秒 | 65k |
九 | 北望鴈門關 | テンポを速め3度めの雁行の主題。いよいよ北に望んだ雁門の関(山西省の北にある長城の名関)が開き、第26段までさまざまな変化を尽し雁の行軍が始まる。 段末に結びの雁の句。 5--3-5-3 | 5-61-21--2 | 2-2--2-2 | 2222222-- | 3--- |
32秒 | 95k | |
十 | 蘆花月夜 | 冒頭に微かな呼群の主題。 6--33-3- | 633-3--- | 続いて蘆花の主題が、始め高く続いてオクターブ低く2度あらわれる。 121--23- | 2---2-1-6 | … その後、虚罨(きょあん)で第1弦を3度打ちつつ、蘆花の月を見上げる。 |
33秒 | 97k | |
十一 | 顧影相吊 | 泛音 | 冒頭に飛雁の主題(3度下行型)。 553-3--- | 553-3--- | すぐ続いて雁落の主題。 -2-31-65 | 3--3---- | |
15秒 | 45k |
一二 | 冲入秋旻 | 冒頭に散音で飛雁の主題(4度上行型)。秋空のただ中に深くわけ入る。 5--51-1- | 551-1--- | |
27秒 | 79k | |
十三 | 風急鴈行斜 | 高く飛ぶ雁行の列に容赦なく風が吹きつけ、第1のクライマックスをつくる。 第10段の蘆花の主題が、オクターブ高く2度あらわれ展開する。 121---2- | 2-2--1-1-6 | … 飛雁の主題(4度上行型)も加わる。 551-1--- | 551-1--- | |
32秒 | 95k | |
十四 | 寫破秋空 | 泛音 | 秋空を高く破るように、冒頭に飛雁の主題(3度上行型)。 335-5--- | 335-5--- | 雁落の主題がさまざまに展開する。 1--65165 再び飛雁の主題(3度下行型)オクターブ低く。雁落の主題がさらに展開する。 553-3--- | 5--13-3- | 5-615-5- | 5--61--65165 |
26秒 | 76k |
十五 | 遠落平沙 | 原注:此段、与雲中弧影皆意思闊遠。須當指授。 遠く柔らかく、冒頭に散音で飛雁の主題(4度上行型)。 5--51-1- | 551-1--- | 一本の弦をオクターブに渉ってすべらす上滑音が高く低く2度。全て闊遠(はるか広く遠い)の意思。 原注に此對巳。用左手大指向内出声。如托之類とある雁落の主題 6--53 を繰り返し(原注:此對同上) 第3段の砂州に舞い降りる主題で結ぶ。 66.-66 | 666-6--- | |
41秒 | 121k | |
十六 | 驚霜叫月 | 原注:叫月声瞭唳 月に叫ぶ声が霜の夜に響く。始めゆっくりと低くやがて高く鋭く。 5--1-11- | 5--1-11- | 1--3-33- | 1--3-33- | 3--6-66- | 3--6-66- | |
43秒 | 126k | |
十七 | 延頸相聚 | 泛音 | 冒頭にテンポをおとし散音で飛雁の主題(4度上行型)。 5--51-1- | 551-1--- | 続いて泛音で飛雁の主題(4度上行型)。 551-1--- | 551-1--- | 再びテンポを速め、蘆花の主題が変化音であらわれ、首を延したり呼び合ったりしてあい集うさま。 7-17-11- | 7--6561- | 1--- … 時に飛び立ち落ちるものもいる。雁落の主題 6--53(原注:此對与遠落平沙同) |
36秒 | 106k |
十八 | 知時報更 | 第7弦での虚罨(きょあん)・抓起(はき)、大撮(だいさつ)の連続した高まりが、出発の時を知らせ第2のクライマックスへ導く。 | 14秒 | 41k | |
十九 | 争蘆相咄 | 高音部での拂(上行アルペッジョ)、撥剌が、蘆の中で鳴きかわしざわめきたつ出立のクライマックスをつくる。 | 15秒 | 43k | |
二十 | 群飛出渚 | 冒頭に蘆花の主題が、急くようにあらわれ、堰を解かれたような群れが渚を飛び立つ。 121-222--1-6 | … |
11秒 | 32k | |
二一 | 排雲出塞 | 放たれた勢いは雲を排し高く飛ぶ。大撮の連続するエネルギー。 | 7秒 | 22k | |
二二 | 一舉萬里 | 泛音 | あくまでも高く高く。一挙に万里をめぐる。 また一挙に落下する。 1---6532166--- | 6------- |
24秒 | 70k |
二三 | 列序横空 | 厳格な列をつくり空を横切る。飛雁の主題(4度上行型)。 6---51-35 | 3.2 6555-1- | 6---51-35 | 6532653233- 55 | 1-1---55 | 1-1----- | 雁落の主題の急進型 6532 が活躍する。 |
21秒 | 62k | |
二四 | 啣蘆避弋 | 蘆を啣(くわ)え、弋(よく、糸のついた矢)を避る。(雁銜蘆而翔,以避弋 『淮南子』修務訓) | 29秒 | 86k | |
二五 | 盤聚相依 | しっかりとあい依り集う。末尾に雁落の主題の急進型 6532 。 | 19秒 | 57k | |
二六 | 情同友愛 | 友愛の情にかたく結ばれる。冒頭に飛雁の主題(4度上行型)。 551-1--- | 551-1--- | 抓起の連続による雁の声の描写。 5--26--3 | 636363636363 | 2- |
17秒 | 52k | |
二七 | 雲中孤影 | 漸縵 | 原注:此段闊遠。須當指授。罷免断続窘促失節之病。与遠落平沙意同。 第15遠落平沙の段と同じく、全て闊遠の趣き。 ここから散板に入り、だんだんと速度を落としていく。 冒頭に蘆花の主題があらわれるが、過音、走音などの滑音の進行に支配され、雲の中に入りこんでいく。 616---1- | 1-3〜過音1〜走音6-5 | 121---2- | 3--- … |
54秒 | 158k |
二八 | 問訊衡陽 | 衡陽(洞庭湖の南)のことを訊ねる。 冒頭に第4段の呼群の主題が宮音を主体にあらわれる。羽調(短調に近い)から宮調(長調に近い)への転調をつげる。 1--55-5- | 1-3--55- | |
30秒 | 88k | |
二九 | 萬里傳書 | 万里に書を伝える。 宮調はまだしっかり確立しておらず、羽音の打圓で始まる。 6-3--63636- しかし羽調は経過的な扱い。羽調(喩えれば第26段までの、遠く高いものを志向するが、世俗を完全に断切れず胸がさわぐパセティックな衝動)から宮調(喩えれば神仙の平明な境地)に解決を熱望する音の進行。 |
34秒 | 112k | |
三十 | 入雲避影 |
雲に入り光を避ける。 経過的な句から宮調に終止する。 |
35秒 | 103k | |
三一 | 列陣驚寒 | 泛音 | 雁行の列が寒さに驚く。(雁陣驚寒、声断衡陽之浦 王勃『滕王閣序』) 冒頭に飛雁の主題(3度下行型)。 553-3--- | 553-3--- | 浄められた魂の歌。ここから最終段までは、マーラーの第9交響曲の終楽章のアダージョのように、様々な葛藤の旅を経た雁は、大空の雲に昇化していく。 |
51秒 | 149k |
三二 | 至南懐北 | 入縵 | 南に至り北を想う。 アダージョに入る。今は昔を心静かに思い出せる。胸を騒がせることはない。 |
46秒 | 136k |
三三 | 引陣冲雲 | 群れを率いて雲に入る。 浄められ雲にあそび高く舞い立ち舞い降りる歌。 |
1分5秒 | 191k | |
三四 | 知秋入塞 | 冒頭に蘆花の主題。 6-16---1---53- … 続いて原注に入塞声とある雁の最後の鳴き声。 161--3--5 | 535--1--2 | 152--- … |
41秒 | 120k | |
三五 | 天衢遠舉 | 冒頭に双弾による宮音の連打。天を打つ太鼓のように。 11.---11- | 111-1--- | 天衢(てんく、天の道)を遠く挙がり、もう地上に降り立つことはない。 最後に4度めの雁行の主題が散音で低くゆっくりと立ち上がる。 6-6-1-1-211- | 66112-1-1--- | |
1分19秒 | 231k | |
三六 | 聲斷楚雲 | 泛音 | 雁行の主題が泛音で繰返される。 雁落の主題が永くながく引きのばされ、曲は宮音に終止する。 5--5325-----5-3-2- | 1---1--- | 5-1----- | 1------- | | |
49秒 | 144k |