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 江戸初期の絵画2 俵屋宗達と尾形光琳

江戸時代の絵画
各階層を反映した様式 知識層(文人) 南画
           武家      狩野派
           町衆、公家   琳派
           一般町人    町絵師 風俗画、浮世絵
町人、知識層の自己意識 ゆがみ、蕩尽、 …バロック
            隠遁、韜晦、脱社会 逸脱 艶隠者
            生命力

俵屋宗達
[生涯]
生没年不詳 慶長、元和、寛永期に活躍(近世初期風俗画のピークと重なる)
琳派の祖 〈伊年〉〈対青〉〈対青軒〉印
京都上層町衆の出 唐織屋の蓮池氏、その別家喜多川氏の一族?
〈俵屋〉を屋号とする絵屋、扇屋を主宰
千少庵,本阿弥光悦1558-1637,烏丸光広1579-1638など当時一流の文化人と親交
妻は光悦の従姉妹
1602年慶長七年 厳島神社《平家納経》願文,化城喩品,嘱累品における金銀泥表紙、見返し絵《鹿図》など 願主福島正則
元和年間1615-24京都俵屋絵の扇面源氏絵の評判(磯田道冶 仮名草子『竹斎』)
光悦嵯峨本下絵の木版雲母摺(きらずり)の意匠を担当
1616年後水尾天皇は狩野興以に参考として俵屋絵を見せる (『中院通村日記』)
元和末以降障壁画を手がける
◎1621年元和七年養源院《松に岩図》本堂襖絵、《杉戸絵》
  1594年文禄三年淀君が建立(「養源院」は淀君の父,浅井長政の法名)→1619年焼失→徳川秀忠正室(淀君妹、崇源院)が再建(伏見城遺構を転用)
1630年寛永七年 後水尾院から金碧楊梅図を含む屏風絵3双を依頼される
◎《西行法師行状絵詞》 宗達絵 烏丸光宏書  (旧毛利家蔵) 個人蔵
◎《西行法師行状絵詞》一、二、四巻 宗達絵 烏丸光宏書 出光美術館
   法橋位(光広奥書)
1631年寛永八年9月13日醍醐寺三宝院座主覚定1607-61の依頼により《関屋澪標図屏風》を描く
1642年宗雪法橋位、宗達没?
1643年没説

[作品]
中世やまと絵の大胆な拡大・デフォルメによる近世的復興 工房作品も多い
時代 慶長   元和 寛永  
宗達 前期:画工 俵屋   後期:画家 法橋  
1.技法 木版刷り、型紙→金銀泥の面的処理
シルエット影 没骨(線の否定)
「宗達の絵は影法師を写しえたるものなり」
近衛予楽院『塊記』
 
たらしこみ

水墨の探究(内面化)
 
2.形式 扇面、色紙、短冊、冊子、絵巻
小画面   料紙装飾
 
屏風、襖絵
大画面
 
3.主題 自然 四季草花のクローズアップ
限定されたモチーフ 広がり
 
人事 物語
緊密さ 枯れ
 

【慶長期】
金銀泥下絵和歌巻のシリーズ 古典による詩書画一体の最も成功した例
1610年代《金銀泥鹿下絵和歌巻》 光悦筆 宗達絵 オリジナル22mの長巻
 『新古今集』から秋・月の歌 空間と躍動感
 益田孝(鈍翁)以降、昭和期に二分される
 →前半部:山種美術館、サントリー美術館、五島美術館、MOA美術館、サンリツ服部美術館、個人蔵(他2か所所蔵不明)
 →後半部:1951年シアトル美術館 10紙、930cm 新古今12首
◎《鶴図下絵和歌巻》 光悦筆 宗達絵 34.0×1356.0cm 京都国立博物館
◎《金銀泥四季草花図下絵和歌巻》 光悦筆 宗達絵 畠山記念館
  蓮,鹿,竹,梅,蔦,鶴,四季草花 金銀泥料紙装飾
◎醍醐寺三宝院扇面貼交屏風 扇屋を偲ぶ遺品、元和寛永期か
【元和・寛永期】
水墨画:没骨(面)による対象把握、量感と空間の表現 日本水墨画を確立
●《蓮池水禽図》 京都国立博物館 2羽のかいつぶり
 《雲龍図屏風》 フリア美術館   宗達現存最大の水墨画
◎《蘆雁図衝立》 醍醐寺無量寿院 門跡堯円との関係
◎《牛図》双幅 頂妙寺 烏丸光広書 漢詩(草書)と和歌(かな)の対照と調和
 左:僉曰是仁獣,印沙一扇牛。縦横心自足,芻菽復何求。
 右:身のほどをおもえ世中うしとてもつながぬうしのやすきすがたに
金地着色画:
◎1621年《松に岩図》本堂襖絵、《杉戸絵》唐獅子白象麒麟図 養源院
 《松島図屏風》 フリア美術館
俵屋宗達 風神雷神図屏風から風神 ●《風神雷神図屏風》総金地 建仁寺 古典期創造のピーク
 体の彩色の変更(雷神の赤から白など)、音が出ない連鼓などから風神は文殊、雷神は普賢、中央の空白に仏、合わせて「毘盧遮那三尊像」を見立てる(村瀬博春)
 二曲一双の形式は「趙州狗子」など禅の悟境を表す「投機画」(村瀬)
◎《蔦の細道図屏風》 萬野美術館→相国寺蔵 斬新な歌屏風
●1631年《関屋澪標図屏風》 静嘉堂文庫美術館 理知的構成へ
 寛永八年9月13日宗達の源氏物語屏風絵が「今日出来。判金一枚。結構成事也」(醍醐寺覚定『寛永日々記』、五十嵐公一が発見)
◎《舞楽図屏風》総金地 醍醐寺三宝院 宗達は醍醐寺とも特別な関係
 《槙檜図屏風》 山川美術財団


尾形光琳 1658-1716 (万治一-享保一)
裏       表
尾形光琳 風神雷神図屏風から風神 酒井抱一 夏秋草図屏風から秋草

曾祖父 道柏─本阿弥光悦の姉
    │
祖父  宗柏(光悦周辺の文化人)
    │
父   宗謙
    ├─────┬────┐
    兄藤三郎  光琳  弟尾形乾山1663-1743.6.2 ref.乾山年表

[生涯]
尾形光琳 先哲像伝から 名は惟富、通称は市之丞。号35歳から光琳のほか,方祝、積翠、砂声、道崇、青々、寂明など
京都の高級呉服商雁金屋尾形宗謙の次男に生 長男藤三郎、弟尾形乾山
1687年貞享四年 父宗謙没、遺産のほぼ半分を譲渡、放蕩生活に蕩尽
39歳ころ画家として立つ決意
1699年元禄十二年 乾山は鳴滝に開窯,乾山焼の絵付け 染織や蒔絵の意匠
1701年44歳法橋位 公家二条綱平1672-1732の推挙
画は最初父の手ほどき 狩野派山本素軒 (1706没) に学ぶ
尾形家には光悦や宗達の作品 宗達画風へ転向
1704年宝永元年 銀座商人《中村内蔵助(くらのすけ)像》 大和文華館
1704年初めて江戸へ下る 以後宝永年間1704-11  4,5回京都江戸往復
江戸深川の富裕な材木商冬木家に寄寓、津軽越中守邸に出入り
酒井雅楽頭(うたのかみ) 忠挙から扶持 雪舟、雪村の模写など水墨画の探求
1709年3月頃5年間の江戸暮らしを切り上げ京都へ帰る
1711年正徳元年 京都新町通り二条下ルに新居
1714年銀座闕所 (けつしよ) 中村内蔵助が家財没収、追放

[作品]
宗達を基礎 深い自然観照 理知的な構成 京都の粋に斬新な意匠性と豊な装飾性
金地着色画:
●《燕子花図屏風》総金地 根津美術館 法橋叙任後まもなく1702年頃
  唐衣きつつなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ想ふ
 『伊勢物語』絵の伝統の窮極の純化、劇場空間の背景化 型を使う
 《四季草花図巻》 千葉個人蔵 1705年
◎《躑躅 (つつじ) 図》 畠山記念館 1707年頃
◎《白綾地秋草模様小袖》 東京国立博物館 江戸寄居先冬木家の妻女のため
 《波涛図屏風》 メトロポリタン美術館 1704–9年頃
 《八橋図屏風》 メトロポリタン美術館 1709年以降
◎《風神雷神図屏風》総金地 東京国立博物館
   屏風裏面に◎酒井抱一《夏秋草図屏風》銀地 東京国立博物館 1821年
●《紅白梅図屏風》 MOA美術館 最晩年1714年頃 津軽家伝来
 〔技法〕地と流水部分について諸説
  地:1.金箔説(従来の見方、中井泉2010年調査報告(デジタル顕微鏡、
      蛍光エックス線分析装置、粉末エックス線回折計などの調査))
    2.擬似金箔説(金泥等で金箔・箔足を描く、下記東文研報告書)
  流水:1.銀箔地礬砂引きと硫黄酸化説(中井泉2011年調査報告では
       銀箔の厚みや箔足も認める:最新最有力説)
       銀箔地硫黄酸化・燻蒸説(田島志一、中村溪夫など)
     2.金地に有機顔料説(下記東文研2005年報告書参照)
     3.金地群青説(浜田青陵、山口蓬春、千沢禎治など)
     4.型紙墨絵説(白畑よし、松下隆章など)
 〔写生〕中町薮内町光琳屋敷付近の御用水路と紅白梅を描いた(白崎秀夫)
 〔図像〕伝周徳元《墨梅図》双幅(西本願寺伝来)との関連(河野元昭)
  雪村《布袋・紅白梅》三幅対(茨城県立歴博)に倣う(中村溪夫)
 〔図像学〕以下の諸説を含む重層的なイメージ
  林逋「暗香」詩、乾山からの影響(松下隆章)
  紅梅は内蔵助、白梅は光琳、流水はさん女(小林太市郎)
  宗達風神雷神屏風の変身(山根有三)
  壺形の流形は御造酒、左右の紅白は水引(加藤藤圃)
  「暗香」詩、能「菊慈童」「江口」「春の来迎」からの解釈(林進)
  能「東北」との関連(河野元昭)
  能「江口」から普賢菩薩の遊女(白梅)と西行(紅梅)を見立てる(村瀬博春)
   とすれば普賢と文殊を見立てる宗達風神雷神図とも重層する(村瀬)
  奈良絵本「たなばた」の織姫(白梅)彦星(紅梅)を見立てる(村重寧)
  伊勢物語梓弓の段の情念の淀んだ流れ(仲町啓子)、などの諸説
◎《孔雀立葵図屏風》 個人蔵
◎《太公望図屏風》 京都国立博物館
◎《槙楓図屏風》 東京芸術大学
 《鳥獣写生帖》 文化庁 狩野探幽の模写
水墨画:
◎《竹梅図屏風》総金地墨画 東京国立博物館
◎《維摩図》 紙本墨画 個人蔵
◎《竹虎図》 紙本墨画 京都国立博物館
[工芸作品]
●《八ッ橋蒔絵硯箱》《冬木小袖》 ともに東京国立博物館
◎光琳絵付けの乾山焼《銹絵角皿》東博MIHO MUSEUMなど
 中国文人の詩書画一体の世界を高度に結晶化
◎〈小西家文書〉 文化庁,大阪市立美術館分蔵 写生帖,遺印,画稿など
  光琳研究の重要資料


参考書
森山知己「尾形光琳 国宝「紅白梅図」描法再現の記録」 森山氏のサイト
国宝紅白梅図屏風 MOA美術館・東京文化財研究所編 中央公論美術出版 2005年
 2200万画素デジタル画像、蛍光X線分析、デジタルX線画像による報告書
国宝燕子花図屏風 根津美術館編 根津美術館発行 2005年
 保存修理記念出版。図版の色調再現に難
日本美術全集 江戸の絵画2 宗達と光琳 小林忠/村重寧等編 講談社 1991年
絵は語る 平凡社 1995年-
 太田晶子 宗達 松島図屏風 座敷からつづく海
 玉蟲敏子 酒井抱一 夏秋草図屏風 追憶の銀色
山根有三著作集1-7 宗達・光琳研究他 中央公論美術出版
林進《連続講座》「宗達を検証する」 友人角倉素庵の視点から

おすすめ美術展
「燕子花と紅白梅」
2015年4月18日(土)〜5月17日(日) 根津美術館
没後300年忌記念展 光琳国宝2点を同時展覧
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Designing Nature The Rinpa Aesthetic in Japanese Art
May 26, 2012–January 13, 2013 The Metropolitan Museum of Art
KORIN展 国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」
2012年4月21日(土)〜5月20日(日)  根津美術館
特別展「美しきアジアの玉手箱−シアトル美術館蔵 日本・東洋美術館名品展−」
2009年7月25日(土)〜9月6日(日) サントリー美術館
 分断された本阿弥光悦・俵屋宗達の鹿下絵和歌巻を可能な限り集め展示
 神戸市立博物館、山梨県立美術館、静岡・MOA美術館、福岡市美術館を巡回
特別展「乾山の芸術と光琳」
2008年1月18日(金) 〜2月26日(火) MOA美術館(終了)
 併せて尾形光琳紅白梅図屏風を1月18日(金) 〜3月2日(日)まで展示
2005年秋季特別展 琳派展[ 「俵屋宗達-琳派誕生」
2005年9月16日(金) 〜12月18日(日) 細見美術館(終了)
細見美術館は細見良、古香庵1901-79の日本古美術コレクションを中核に、とりわけ琳派について意欲的な展示を行う
2004年秋季特別展 乾山−幽邃と風雅の世界−
2004年9月1日(水)〜12月15日(水) MIHO MUSEUM(終了)
光琳合作銹絵角皿など詩書画一体の陶芸世界
琳派 RIMPA
2004年8月21日(土)〜10月3日(日) 東京国立近代美術館(終了)
RIMPA的なものの系譜をアンディ・ウォーホルなどにまで拡大しようとする展示
特別展国宝燕子花図(修復記念展)
2005年10月8日(土)〜11月6日(日) 根津美術館(終了)
尾形光琳 燕子花図屏風
毎年燕子花の咲く4-5月に展示 根津美術館
 平成21年10月7日から新館開館
 新創記念特別展第5部 国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開
 2010年4月24日(土)〜5月23日(日)
尾形光琳 紅白梅図屏風
毎年梅の咲く2月頃展示、晩年の旧居を復元した 光琳屋敷も必見 MOA美術館



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 日本美術史ノート 俵屋宗達と尾形光琳     2002.11写 

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