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 北京信息

3月11日(土)晴  管平湖の家

管平湖の家の入口 おだやかな早春の日の午後、TさんとKさんの3人、Tさんの案内で小蓆胡同23の管平湖の旧宅を訪れました。
にぎやかな前門の道路から、大柵欄のむかいの細い路地を入って、人気の少ない路を曲がりながら10分ほどでそれとおぼしい胡同の入口につきます。この変哲もない古びてさびしげな入口は、以前写真でみたおぼえがあります。
中に入ると、狭く建てこんだなか、左に通路が続き、一番奥の区画に管平湖が住んでいたといいます。そこは今は人の気配がありません。入口付近の部屋は何世帯か住む人がい、昔、有名な古琴家の管平湖が住んでいたことを訊ねても、誰も知る人がいません。
外にで、写真をとり、煉瓦の壁や1本の小さな木などまわりの様子を確かめ、このような質素なところに、今世紀の中国音楽を代表する芸術家が、ある一時暮らしていたことを念い立ち去りました。

それから近くの、大江胡同の古琴製作家、田双[王昆]さんのお宅を訪問しました。
田さん 北京の古琴製作の専家は、田双[王昆]と孫慶堂と張建華の3人の名前を聞きます。その内、孫さんの小さな工房は以前訪れたことがあります。田さんは、今日初めてです。仕事場は孫さんのところと似て、道路に面し、小さなスペースをうまく塩梅しています。
田さんは、北京古琴研究会の世話役をつとめ、いつも温厚な初老の紳士のようにみえます。この日も私たちを歓んで迎え、壁にかけてある製作したばかりの小さくかわいらしい膝琴や製作中の古琴を弾き競べせてくれました。
田さんの工房 田さんの古琴の音色は、すこし硬い感じがします。これは田さん自身の好みなのでしょう。また灰漆は、伝統的な鹿の粉ではなく、鉄粉を多用し、この辺も音色に影響しているかもしれません。ちなみに私が今北京に持ってきている古琴は、日本でゆずってもらった田さんの手になる古琴です。音色は、〈古琴音楽日誌〉で聴くことができます。
さんざん雑音をたて弾き散らかしたあとおいとましました。写真はその際にとったものですが、意外にもいつもの温厚な表情が、かたくこわばったものになってしまいました。これは撮る人がへた(写真も古琴も!)のせいもあるでしょうが、この部屋での田さんの普段の孤独で孤高な居住まいを表しているようにも思えます。田さんはここに独りで住まわれ、数カ月に1面のペースで製作を続けてられているようです。











  北京信息   2000.3.20更新

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