琴詩書画巣     古琴の調べ   中国絵画   詩・書   中国文人の世界   北京信息   パリ信息   リンク   

 北京信息

11月30日(火)快晴  黄秋園生誕85周年展

会場風景 近くの中央美術学院画廊で黄秋園生誕85周年展が開かれています。閉館まで見ていました。今まで図版で見ていた代表作を含む87点がまとまって見れるとても良い展示ですが、特に宣伝もなく、たった1週間、明日までしかやりません。きっと展示を知らない人が多数でしょう。
これで今年後半に10月李可染(北京中国美術館)、11月傅抱石(東京松涛美術館)、黄秋園と今世紀の大きな中国画家の作品をまとまって見ることができました。
(以下の写真は会場で撮ったスナップです。紙にのった水墨の質感やタッチの生命感は写真では失われてしまいましたが、記録として載せます)

廬山図
    全景廬山図全景
    人物をつつみこむ山水廬山図人物  落款の行草書落款
人物
    他の作品の人物他の作品の人物  人物アップ別の人物のアップ
筆触
    松のタッチ松のタッチ  雪景のタッチ雪景のタッチ

    精魂の大画巻(部分)大画巻(部分)

    楷書「水経注」楷書「水経注」


●黄秋園簡介
 黄秋園は1914年南昌に生まれました。字は明、号は大覺子、半个僧。幼い時から画を愛し、初め画店に入り古人の名作を模写し研鑽をつんでいきました。後に銀行に勤めて35年、書画の創作は全て業余の時間に行われました。このようにして深く大きな蓄積をたくわえつつ、1970年に退職した後は全力を書画の創作にあて、亡くなるまでの10年の間に芸術創作の一生涯の高峰にのぼりつめました。1979年5月、惜しくも病のため卒しました。

芸術の特色
 黄秋園の一生は、有名な師の教えを受けず全て自学により成っています。加えて業余の作画は人の数倍もの精力が必要でした。平生は、時におもねたり俗に走ったりせず、特に人の注目を引こうとしたり名誉欲もなく、あたかも“盛世の遺賢”のようでした。
 黄秋園の画は、山水・花卉・人物・界画それぞれに秀でています。
 晩年の山水は2つの特徴があります。
 一つは、構成が宋人に近く、山岳が積み重なり、堅実な骨格、精微な墨法で描かれています。画面は空間の深さをあまり強調せず、鬼臉皴(きれんしゅん 岩の描き方の一種、鬼の顔のような皴)を埋めつくし、一種の現代感を造りあげています。とりわけ雪景は玉潔冰清の趣きがあります。
 もう一つは、筆法が元人に近く、雄大な丘壑が複雑に錯綜し、草木は様々に豐茂し、精神が高揚して舞上がり一種、雲霞の中にあるような趣きがあります。こうした画の中で、黄秋園は伝統山水画に対し極高の境界に達しています。

作品の声価
 黄秋園は亡くなってから、次第に作品が知られるようになっていきました。1980年代の北京では黄秋園熱が起こり、1986年黄秋園画展が開催されました。李可染先生は黄秋園画展を見た後、黄秋園の長子・黄良楷にこう言いました。
 “私は黄先生の画にたいへん敬佩しています。自分の一枚の画と黄老の一枚の画とを交換したいほどです。”
 またこのような題跋を書きました。
 “黄秋園先生の山水画は、石溪の筆墨の圓厚と、石涛の意境の清新と、王蒙の布局の茂密をそなえ、その精髄を咀嚼し自らの法としています。蒼蒼茫茫として烟雲は紙に満ち、この画を見れば气象は万千として身がひきしまる思いです。二石、山樵が今生きていたら必ずや嘆服したことでしょう!”
 このような評価は極めてまれなことです。








  北京信息   2000.3. 1写  更新

  琴詩書画巣 | 古琴の調べ | 中国絵画 | 詩・書 | 中国文人の世界 | 北京信息 | パリ信息 | リンク