琴詩書画巣     古琴音楽   中国絵画   詩書   中国文人世界   北京信息   Paris信息   LINK   

 北京信息

4月11日(火)晴  北京の桜、日本の桜

北京の桜
玉淵潭公園の柳

砂嵐と交互して北京は急速にあたたかくなっています。柳の新しく芽吹いた葉の単純な黄緑が、無彩色に近い街頭の冬枯れだった景色にあざやかです。日本では柳がこんなに美しいものとは思いませんでした。そうした緑に加え、春を迎える花(春迎花)であるあざやかな黄のレンギョウからはじめ、真っ白なコブシ、赤紫のライラックなどの花が、街路のあちこちに咲きそめています。
しかしこの季節、何といっても気にかかるのは日本で毎年見てきた桜が、北京ではどう咲いているだろうということです。そこで桜が3000本も植えられているという北京城外西の玉淵潭公園に行ってきました。
広い池を中心にした公園の西北に桜花園があり、染井吉野は見かけませんでしたが、山桜がすでに咲き終わり八重桜のつぼみがふくらんでいました。桜の樹自体が植えられてからまだ年数を重ねていず、日本の桜を知るものにはものたりなく感じます。この公園自体が整備中ですので、あと10年もすれば立派な桜の公園になるだろうと思いました。
北京の桜

日本の桜
日本の桜

玉淵潭公園で桜を見た翌日、用事があり一時日本に戻りました。川越喜多院の桜はすでにおおかた散っていましたが、中にまだ満開の花をつけ、春風におしげもなく花吹雪を散らしている桜もあります。大殿のやぐらからしばらく、その吹雪のようすを見ていました。

 さくらばな樹の下風は寒からで 空にしられぬ雪ぞふりける  貫之

喜多院の桜 花びらは散って樹の下につむじ風を作っています。
平安時代の人は、花の散るようすに見えない雪を見ましたが、花はふだん見えない風の動きも、花の渦巻として見せてくれます。
花のつぼみから咲き始め満開になり短い間に散っていく過程は、容易に心の中にイメージしやすく、ふだん見えない時間の移り変わりを描いてくれます。
鎌倉時代の人は、花の推移に、美しい女性が桜の樹の下で死に腐って骨となっていく様を重ねました。
今、花の吹雪は、桜を見にきた人々にみなはなやかに平等にふりかかっています。

花の下では、めいめいの人生は等しく、一時色どって消えていく。吹雪のようすを見ながら、そんなことを思いました。
ひるがえって中国の人にとって花を見る時どのような思いがまといつくのでしょう。中国に年を重ねて住むこれから確かめていくことです。




  北京信息   2000.4.22更新

  琴詩書画巣 | 古琴音楽 | 中国絵画 | 詩書 | 中国文人世界 | 北京信息 | Paris信息 | LINK